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2005/12/21

ほろ酔いの秘儀

大阪大学での集中講義のため、
西へ。

 朝、
 見た当時、それほど大絶賛!というわけでも
なかったのだが、いくつかのシーンがもう
一度見たくなって買った『アマデウス』
のDVDを、冒頭の30分だけ見ていた。
 新幹線の中でその続きを見られる
のだったら幸せだったのだが、
 ずっと仕事。

 鷲田清一さんにお会いする。
 以前、山本耀司さんのパーティーで
おめにかかって以来。
 今は大阪大学の副学長をされていて、
大変お忙しい。

 アルシーヴ社の佐藤真さん、斎藤夕子さんも。

 鷲田さんの独特のやわらかくて
絡み合うような文章のスタイルが
 以前から気になっていたが、
面白いことをきいた。
 
 鷲田さんは、お酒を少し飲みながら
「ほろ酔い加減」で原稿を書くことが
多いというのである。

 酩酊してしまってはダメで、
ほんのちょっぴり酔っている、という
感覚が良いのだという。

 それで連想したことがある。
私は、飲み会の席などで黙って中空を
見つめているときがあるが、
 そのような時、「ねむいのか」
とか、「つかれているのか」などと
言われる。
 
 ところが、本人はこれ以上ないくらい
覚醒している。
 コップの中のお酒の色や、
周囲の音や、自分の座っている椅子の
触感や、そのようなものが、
 余計な意味付けなしにダイレクトに
心の中で把握されている状態。
 クオリアが、最も鮮明に感じられている
時間の流れ。
 それを楽しんでいるのだ。

 ほよ酔いの秘儀というものがある
に違いない。
 そういえば、有田芳生さんのブログは、
「今夜もほろ酔い」
と言う。

 鷲田さんと別れたあと、部屋の中で30分くらい
『アマデウス』の続きを見た。
 やはり、それほど傑作の映画だとは思わないが、
ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト
その人には心から共感する。

 アマデウス君は、お酒を飲みながらほろ酔い
で覚めていたに違いない。

12月 21, 2005 at 07:52 午前 |

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受信: 2005/12/22 12:33:46

コメント

ずいぶん昔の日記に失礼します。
鷲田先生もお酒も大好きで、検索してたらたどりつきました。
・・・私はずっと疲れるとそのクオリアになるような・・・。情報が入ってきすぎてつらいので、お酒で麻痺させる気がします。

投稿: hana | 2008/03/26 21:46:11

“ クオリアが、最も鮮明に感じられている”状態は

私にもイメージできるというか
こういうことかなぁ…と想起できるような気がします。

ただ、時間という概念は、

私にとっては、まだ突き詰めて考える段階にないみたいで
(物理は、不得意分野ということもあって)感覚的な捉え方しかできません。

お酒は、ほとんど飲まないので良く分からないこともありますが

“覚醒”という言葉から

なぜか、例の「女王の教室」の「目覚めなさい!!」というセリフが
浮かんできました。(一体なんでなんだろう??)

それにしても、茂木先生の日記は、

先生の脳の中の電気信号が、高速でスパークしているのが見えるようで

ほんとうに、すっごく面白いですね!!!

(そもそも、時間の流れを、可視的に、または言葉や数字で
表すことってできるのかしら???…

投稿: TOMOはは | 2005/12/22 15:26:18

 「ほろ酔い効果」とは少し違うのかもしれませんが、僕がお酒を飲むと、体は酔っ払って、心の制御からどんどん離れていくのに、心の方は意識がはっきりしたままで、特に変化がないという酔い方をします。
 心がもっと開放されるような酔い方をしたいので、少し残念です。

投稿: cosmosこと岡島義治 | 2005/12/22 13:26:36

こんにちは。大阪大学で集中講義を受けた者です。

ふうむ、なるほど!
「ほろ酔い時にクオリアが最も鮮明に感じられる」
という説明で、講義中はいまいちストンと理解
できなかった「クオリア」という言葉のニュアンスが
よりよく掴めた気がします。

普段我々が知覚している世界と言うのは、脳によって
合理的に加工されてしまった後の世界である、という
話が今日の講義でもでてきましたが、
酒パワーによって脳内での加工方法が変化し、
普段無視していた点に注目するようになったりする、
ということでしょうか。

以前、あるキノコが合法だった時代、一度試してみたこと
があって、それを食すと、世界をとても「ビビット」
に感じることができたんです。
まっすぐなものが「ものすごくまっすぐ」見える、
ボールペンのペン先が鋭敏に走っている・・
今思えばそのとき感じてたのもクオリアだったのかなあ。

んん待てよ、観察者が酔っても酔わなくても、対象物のクオリア
というのは一緒なの?主観的なもの?(わからなくなってきた・・)

結局理解していないようです。。


どうあれ、今日はどうもありがとうございました。
非常にエキサイティングな、楽しい講義でした。

投稿: なり | 2005/12/22 0:21:28

茂木さん、お邪魔します。

おお、ほろ酔い効果でクオリアが良く感じられるというのですか!それは是非試してみたい。
(…いけませんか?)

酒に弱い私には、ほろ酔いの効果をあまり試したことがありませんが、宴席でのざわめき、グラスのぶつかる音の響き、自分の座っている椅子、熱気を帯びた場の空気などから、クオリアがダイレクトに感じられるというなら、1度少し多めに酒を飲んでみて試してみようかな。
(酒に弱いので私の場合、1杯程度でほろ酔いになると思います)

とはいっても、うちの会社は、先日も掲示板に書いたけど、忘年会の予定、今のところ無いんですよね…。あ、一人でも出来るかな。
失礼しました…。

投稿: 銀鏡反応 | 2005/12/21 19:11:25

ほろ酔いの秘儀面白いです!
「ほろ酔い効果」は深いですね

ちょっと飛躍しますが
私はカンフー映画の「酔拳」を思い浮かべて ちょっと aha!体験かな???

投稿: ROSE | 2005/12/21 19:04:00

私はいまだから言いますが、現役の編集者時代に、この「ほろ酔い」効果を活用していました。本は、業界用語でゲラと呼ばれる校正用の刷りものを何回か印刷所と往復しながら最終版へと完成していきますが、これでいよいよ終わり、多少残った赤字は任せたよ頼んまっせ、と印刷所に手渡す時が来ます。責了というのですが、そのとき、会社に居残って最後のチェックをしている時に、ほろ酔い状態にもっていってもういちどゲラをながめます。するといままで細かい所しか行っていなかった目が完成した果実として全体をながめる目になれるのですね。結構これで重要なミスを発見できました。これもクオリアを感じる目に戻れたってことかも知れませんね。哲学って全体をいつも見ていなければならないのだから醒めた目で部分を見るだけでなくほろ酔いの目が必要ってことかな。

投稿: イガラシシゲル | 2005/12/21 9:42:30

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