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2005/12/02

あすへの話題 夢と向き合って生きる

あすへの話題 夢と向き合って生きる

茂木健一郎

 先日、昔留学していた英国の夢を見た。私はロンドンの郊外の駅の前にいて、どうやって中心街に行こうか、キングス・クロス駅まで列車に乗って行こうかなどと思案しているのだった。
 夢を見るのは、脳が記憶を整理しているからだというのが有力な説である。昼間のうちに経験した様々な事柄を、夜になって眠っている間に整理する。その過程で出るいわば「副産物」が夢なのである。
 夢を見やすい「レム睡眠」が記憶の定着に必要であるというデータがある。どうやら、夢を見ることは、脳の記憶のシステムにとって必要不可欠なことのようだ。
 私たちは、夢の全てを覚えているわけではない。むしろほとんどの夢ははっきりとした記憶として残らないで消えてしまう。目覚める前に見ていた夢など、一部分が鮮明な記憶として残る。一生忘れられないほど強い印象を残す夢もある。
 意識に上り、記憶に残った夢は、人生の体験の一部である。脳内過程として、現実の体験と多くの共通点を持つ。切実さやリアルさという点で、夢が現実の体験に劣るわけではない。
 夢を見ることで、世界の見え方が変わってしまうこともあり得る。夢の中に知り合いが出てきて、その人に対する隠れていた感情に気付くこともある。夢で大発見の糸口をつかむ科学者もいる。
 鎌倉時代に生きた明恵上人は、四十年にわたって見た夢の記録(「夢記」)を残した。「夢記」は明恵上人の人生の記録でもあったのだろう。現実を生きるのと同じくらい真剣に夢と向き合う。そんな考え方があっても良いのではないか。

(日本経済新聞2005年12月1日夕刊掲載)

12月 2, 2005 at 07:57 午前 |

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コメント


「光ファイバーペン」で夢を記録されてはいかがですか。 エジソンは夢を見る為にイスで眠り,仮眠状態を作ったそうです。 そして、見た夢をスグに記録したといわれています。夢は自分自身の中からの無意識のメッセージだといいます。夢に現れる深層心理はDNA情報と現在情報が混ざり合い、夢としてでるのですから。自分で気づかなかったことや知らなかったことを発見できるのです。 素晴らしい内容のものがあるはずです。メモする事により、その事に気付き人生が変わることもあります。
ぜひ夢をメモに!枕元に「光ファイバーペン」を
詳しくはヤフー検索してね。

投稿: | 2006/12/27 22:30:19

 夢と現実、現実世界から受けているものは、それぞれ違うのに、脳の中では同じことが起きているのでしょうか…
 脳の中の世界が、僕の世界の全てなのだとしたら…そして、その脳は現実世界の支配を受けている…脳の中の世界だけでは現実世界を形作ることは出来ない…現実世界の支配を受けない何ものかがあれば話は別だが…
 夢と現実について不思議な価値観を得る事ができました。有難うございます。

投稿: | 2005/12/02 22:10:46

今晩は。
日経木曜夕刊「あすへの話題」、毎週楽しみにしています。

>意識に上り、記憶に残った夢は、人生の体験の一部である。脳内過程として、現実の体験と多くの共通点を持つ。切実さやリアルさという点で、夢が現実の体験に劣るわけではない。

たしかに、睡眠中に見る夢は、現実に体験したことと似ている部分があるようだ。
かつて自分がファンだった、あるポップバンドから、メンバーが脱退した日の前日、西荻窪方面のアンティーク屋を渡り歩いた夢を見たことがある。そのころの私はよく、西荻窪方面のアンティーク屋や本屋などを実際よく訪れてはガラクタのような骨董品を眺めて、なんともいえない味のあるクオリアを感じていたことがある。その体験が自分の夢に、断片的に現れたのに違いない。
その夢はいまも私の脳の中に眠っていて、ときどき何かの拍子で思い出すことがある。それはやはり現実の体験に劣らない形で、光を放っているようだ。

投稿: 銀鏡反応 | 2005/12/02 19:14:43

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