絵のモチーフ
私は、髪の毛はいつも朝洗う。
夜洗うと、完璧に乾かさない限り
寝癖で翌朝爆発してしまうからである。
中学生の頃、よく、後頭部から
一本ぴょんと飛び出してしまった
髪の毛の束を抑えようと気づかれないように
学校の水道にいって水をつけて
押しつけたが、無駄だった。
今考えても不思議なのは、小学校の
時、一週間くらい頭を洗わない
ことがあったような気がするのだが、
今の感覚で言うと気持ち悪いと
思う。
あの頃、風呂は夜はいるものだったから、
また髪の毛ぴょんになっては困るからと、
子供心に洗うのを避けたのだろうか。
研究所で二件の取材を受ける。
讀賣新聞生活情報部の小坂佳子さん。
現代における「美」について。
日経トレンディの平田秀俊さん。
250号を記念して、過去のトレンドについて。
広報の中谷由里子さんと、ホテル西洋銀座に
移動。
版画家の山本容子さんんと対談。
山本さんがNHKの「ようこそ先輩」で
子どもたちにさせたことということが面白かった。
きっかけは、
山本さんの展覧会に来た子どもたちから、
手紙が沢山きたことである。
ボタンや、針、栓抜きなど、
日常の中の何気ないものをテーマにした
山本さんの版画を見て、
「こういうものを絵を描いてもいいんだと
気が楽になりました」
と書いて来たというのである。
アカデミックな伝統の中で、絵のモチーフに
なるものが決まってきてしまっている。
学校教育でもそうである。
そこで、山本さんは、絵のモチーフとして
取り上げられることが少ないものを
子どもたちに見つけさせることに
した。
「えっ、こんなの、絵にならないよ」
というものを絵に描いて、それを自慢し合わせた
というのである。
高橋由一の「豆腐」が大好きだが、
思えば由一も「鮭」とか、妙なものばかり描いている。
してみると、「ぴょん」と飛び跳ねている髪の毛
を絵に描くというのもありか。
山本さんとの対談を企画してくださったのは、
東京新聞、中日新聞、西日本新聞、北海道新聞
の「三社連合」で、
対談終了後、銀座通りに面した
「響」で懇親会。
山本さんがプロデゥースした銀座6丁目の
le 6eme sensに行ってワインを飲む。
東京新聞夕刊のコラム「大波小波」
で今度私のことを書いてくださった
方がいらっしゃるということで、
その記事のコピーを見せていただく。
辛口批評が売りのこのコーナー、
「さる高名な文芸評論家」の書いて
くださった内容は、むしろ爽快であった。
今日も朝髪の毛を洗って出かけることにする。
そんなには跳ねないだろう。
12月 8, 2005 at 06:38 午前 | Permalink
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コメント
高橋由一の「豆腐」、初めて観ました。
なんか勝手なイメージですが
茂木さんのイメージにも重なる絵だと思いました。とっても素敵な絵ですね。
僕は毎朝、寝癖ついてます(苦笑)
僕の対処法はニット帽を被る事です!!
投稿: 将 | 2005/12/09 9:55:46
「私は、髪の毛はいつも朝洗う。
夜洗うと、完璧に乾かさない限り
寝癖で翌朝爆発してしまうからである。」
…私は大抵夜に髪を洗うクチで、良く乾かさないで寝ると、茂木さんの場合のように爆発してしまう。
流石に、1週間くらい髪を洗わずにいる、ということはないが。
さて、アカデミックな現場の中で絵のモティーフになるものが決まってしまっているのはおっしゃる通りです。この高橋由一の「豆腐」の絵を見ていると、やはり何でも絵のモティーフになり得るんだな、という感慨を強くします。
要はどんなものでもよいから身近にあるものをモティーフにして描いてみることが本当の意味で「絵を描く力をつける」ことになるのかも。
@オリーヴオイルや椿油を地肌にすりこんで30分おき、風呂に入ってシャンプーする。これを最低1ヶ月続けると、髪がつやつやになるそうです。
是非、お試しあれ。
投稿: 銀鏡反応 | 2005/12/08 20:23:32
「1週間くらい髪を洗わなないことがあったような・・・・」。大変よくわかります。私も夏の暑い盛りに部活動でドロドロになっても、3日くらい風呂に入らないことがあったりして、今思うと考えられないことだが、へっちゃらに生活していたあの頃。今だと気持ち悪くて夜眠れないような気がするのだが・・・。突き詰めると、男はどこまでも少年時代のクオリアを追いかけつづける生き物なのかなと。あの頃の興奮・喜び・色彩を。「体を洗わなくとも何とも思わなかった」というところに、脳と体の働きにおいて、意識に対する何か大きな謎が隠されているのだろうか?眩かった少年時代のクオリアと相通ずる質感がその中にもあるのかしら?なんてね。
投稿: MT | 2005/12/08 12:58:10