明けて今日
恐山から降りて、娑婆に還ってきた。
ご一緒したのは、新潮社の北本壮さん、金寿煥さん、
菅野健児さん。
それに、テレビマンユニオンの花野剛一さん、
吉田さん、大泉さんのクルー。
初めて眼にする恐山は、想像していた
よりもシンプルで、純粋で、そして深いところ
だった。
住職代理を務めていらっしゃる
南直哉さんを訪ねていったのだが、
南さんの言うとおり、
あそこは、人々の思いが形になっている
場所。
「なつかしい人に会いたい」という
気持ちがストレートに表れるので、
余計な虚飾がない。
人々の魂が裸になれる場所なのだ。
座禅もしたし、対談もした。
星明かりの中、かすかに白く光る
道筋を頼りに、
極楽浜まで歩いた。
風車がキューッと回り、
水辺で鳥がきゅんきゅん鳴いた。
伝説によれば、周囲では夭折した
子供たちが
功徳のために石を積み、
それを鬼が追いかけているはずである。
恐ろしいかといえばそうでもなく、
むしろ、懐かしく、
心が安まる気がした。
最後の朝、イタコの小笠原ミヨウ
さんに小林秀雄さんを降ろしていただいた。
北本壮さんと横に並んで、
頭を垂れて神妙にうかがった。
故人かどうかの確信、確証など
あるはずもない。
しかし、
とてもなつかしい感じがしたことで、
胸がいっぱいになった。
恐山のことは、『考える人』で書く
ことになると思う。
東京に戻り、羽田空港の手荷物受取所を
出たところで、文藝春秋の山田憲和さん。
文學界の連載『脳のなかの文学』を
まとめた『クオリア降臨』の
ゲラについて、打ち合わせ。
そのまま広尾のみなもと忠之さんの
スタジオに向かい、
表紙用の写真を撮影する。
山田さんの「アートディレクション」で、
いろいろサプライズと仕掛けの
ある装丁になりそうである。
みなもとさんが、巨大なポラロイドで
次々と写真を撮っていくうちに、
今まで知らない自分がそこに立ち現れて
くる気がした。
偶然二つ横にあった「オープティパリ」
で食事。
山田さんに、「ここは学生時代に来ていたんですよ」
と説明。
奥の部屋のガラス天井に雨が当たり、
パラパラと大きな音がしたことがある。
十年以上ぶりに訪れた。
青山5丁目の「ステア」で、
精神科医の名越康文さんとお会いする。
TOKIONの西村さんやBAMVIの今井さん、
それに『ソラノ』(近日公開)を監督された山岡信貴
さんなど。
明けて今朝、恐山はすでに遠い。
恐山では二つ大切なインスプレーションを
得たが、
その一つは、過去は死者と同じ世界にある
ということである。
お堂に祀られた故人の写真を見ているうちに
ああ、この人たちのいるところは、
オレの過去がいるところと同じだ、と思った。
中学校の修学旅行で、新幹線の中、仲間たちと
ひょうきんに騒いでいた私は、すでにこの世の
ものではない。
本人はまだ生きているじゃないかと言っても、
そうは行かない。
過去は動かし難く、手の届かないものとして、
恐山のお堂に祀られた死者たちと同じ場所にある。
恐山にいた3日間は、すでに死者の世界に行った。
一秒前とても同じこと。
生きるということは、常に死者たちの世界と
向かいあうことでもあるという、
当たり前のことを思う朝。
そう思えば、私は確かに恐山から死者たちを
連れてきてしまったのかもしれない。
10月 6, 2005 at 08:33 午前 | Permalink
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コメント
人は忙しくなりすぎると面白くなくなる。
とても残念だけど・・・。
なんだか鉄則のようです。
投稿: matumiya | 2005/10/07 2:23:12
恐山にカメラクルーと行かれたということは、
南直哉さんとの対談や坐禅の様子が
いつかテレビで放送されるのでしょうか。
以前、サイトにアップされていた南さんとの
対談が非常に面白く、もっと聞きたいと思ってました。
実際にお二人のやりとりの場に居合わせたかったです。
活字も楽しみですが、映像化されることを期待しています。
投稿: Meg | 2005/10/07 1:24:19
wata-kushi mo Osore Zann ni ikitaiha,,,,,,
投稿: 東次郎 | 2005/10/06 14:26:47