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2005/09/02

見つけたのではなく

大学院の入試、口頭試問の日。

 学生たちも緊張するのだろうが、
こちらも緊張する。
 何しろ人生の岐路がそこにある。
 こうなったことが、ああもなったかも
しれないという
 「偶有性」が露わになるのだ。

 東工大すずかけ台キャンパスは、本当に
緑が濃く、
 特に中央の池の周囲の雑木林は見ていて
ほれぼれする。
 何しろ、子供の頃虫取りで野山を駆け回った
から、
 ぱっと見ると魚影ならぬ虫影の濃さが
判るのだ。

 突然思い出したことがある。
 あれは小学校5年生くらいだったか。
 家から電車で数駅のところにある
大きな公園で、
 「蛍の夕べ」があった。
 今では自然愛護の視点からあり得ないのだろうが、
 蛍10万匹が公園の敷地に放たれる、
というイベントだった。
 
 両親に連れられて、妹と行った。
 しばらく、雑木林の暗闇の中の蛍を
追いかけ回した後、
 ふと休んだ木の幹に、立派なコクワガタ
のオスがいた。
 うれしくなって、大切に持ち帰って
飼った。

 あの、黒光りする個体を見つけた時の
うれしさを、何となく思い出した。
 人間の記憶のダイナミクスというのは
不思議である。

 ある時、あるタイミングで、なぜその
記憶が蘇ってくるのか。
 説明しようと思えばできそうだが、
敢えてしないで放っておくのも良い。

 あの時、私がコクワガタを見つけた
のではなく、
 コクワガタと私が出会ったような
気がするのは、
 入試の日だったからだろうか。

9月 2, 2005 at 07:01 午前 |

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コメント

茂木先生の9月の日記を、ざっと読ませていただきました。

“日記”という表現に見られる

時間・空間にとらわれない過去にも未来にも、どこにでも

思いを馳せることができる“脳”の自由な動きを感じることができました。

この動きということが、ダイナミクスということに結びつくものなのかしら・・・?と

Aha!の一歩手前にきている感じでしょうか?

私も、小学校の頃から、やはり本を読むのが大好きでした。

伝記ものやミステリー・推理小説のシリーズは、ほんとうに良く読みました。

それが今、人間に対する大きな興味につながって
いろいろな人の考え方や生き方に、とても関心があることに
結びついているような気がします。

ついでに、昆虫や生き物大好きな、“チョット変わった女の子”
だったかもしれないと思いだして、息子のことをアレコレ言えない…
とひとりで苦笑してしまいました。

私にとっては、茂木先生との出会いは(精神的な部分で)

必然とも偶然ともいいがたいけれど
大きな意味を持っていることだけは、確信できる
とても幸せな贈り物だと思いました。

ほんとうにありがとうございます!!

子どもたちにも、それぞれに、素晴らしい本や人との出会いが、訪れることを
心から願っています!!

投稿: | 2005/12/29 8:22:30

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