« 二千人! | トップページ | 『脳と仮想』 7刷 »

2005/09/23

あすへの話題 読書の秋

あすへの話題 読書の秋
茂木健一郎

 テレビやインターネットなどのメディアの発達で、人間の脳の使い方が変わってしまうのではないか。そのような心配をしている人に時々出会う。
 そんな時、私は、「心配ないですよ。そもそも、言葉が登場したことで、人間の脳の使い方は劇的に変わってしまったのですから」と答える。
 言葉というメディアが登場することで、人間の脳は新しい活動モードを獲得した。考えても見て欲しい。健康な成獣どうしが、お互いに口を動かし、目をとろんとさせて1時間でも2時間でも空気の振動に聞き入っているのである。
 「言葉」という概念を解さない者にとっては、とても正気の沙汰とは思われないが、そのようにしてお互いの脳の中にある情報を交換することで、人間は文明を発達させてきたのである。
 読書も同じことである。紙の上に並んだシミのようなものを、夢中になって見つめている。言葉を解さない者にとっては訳が分からない行動だが、そのような活動モードの獲得によって、人類が得たものは大きい。
 私は小さい頃から本が好きで、小学校3年の時には、学校にあるSF童話を全部読破した。10歳の時、一日で一気に5冊読んだこともある。最近は忙しくて集中して読書をすることができないので、何時でも本に飢えた状態になっている。
 読書の良いところは、雑音を遮断して集中できるところである。忙しい現代では、没入することの大切さを忘れがちだ。言葉や文字を獲得したことが、人間の脳にとっていかに大きいことだったか。そのことを感謝とともに振り返りながら、読書の秋を楽しみたい。

(日本経済新聞2005年9月22日夕刊掲載)

9月 23, 2005 at 11:14 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: あすへの話題 読書の秋:

コメント

こんばんは。
ある人がこういっておりました。

「自分の経験だけだと、『一人分の人生』だが
本を読むことで、無数の人の経験や知識や、ドラマを学ぶことが出来る。一生の『心の友達』も出来る。本は知識をくれる。本は、勇気をくれる。本は思いやりをくれる。本を読む習慣さえ身につけておけば、その人の(人生の)道
に『希望』が消えることはないんです。」と。

私も本好きなのですが、最近は読みたい本を求めて書店等に入っても、これは!という本にめぐり合うのは至難の技です。

今の世の中、知識や勇気、思いやりを与えてくれ、人生の道程に希望のともしびを点してくれる本がどれだけ出回っているのでありましょう。ビジネスなどでのノウハウを教えてくれる本は数多に溢れていても、人生に希望と生きる勇気と人を思いやる心を育み、人を人たらしめる良書のいかに少ないことか。
茂木さんの著作も含めて、読む人の生命から希望をもって生きる力を引き出す良書がもっと
多く読まれることを願いたいと思います。

投稿: 銀鏡反応 | 2005/09/23 20:22:46

コメントを書く