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2005/08/12

あすへの話題 記憶の「編集力」を鍛えよう

あすへの話題 記憶の「編集力」を鍛えよう  脳科学者  茂木健一郎

 アタマの良し悪しと言うと、真っ先に思い浮かべるものの一つが記憶力である。
 記憶力を良くしたい。そんな願いは、学校の試験に苦しめられている学生はもちろん、学校を卒業して長い年月が経った大人にとっても切実なものだろう。特に、そろそろ物覚えが悪くなってきたと感じる年代の人にとって、記憶力をどうやったら維持できるかは大いなる関心事に違いない。
 ところで、脳の記憶のシステムの本当の素晴らしさは、世間で言う「記憶力」とは少し違う点にあるということをご存じだろうか?
 覚えたことを単純に再現するだけなら、機械にでもできる。実際、単純な再現力で比較すれば、人間の脳はコンピュータにとても敵わない。
 人間の脳だけが持つ素晴らしい能力は、自らの記憶を編集して、新しい意味を見いだす点にこそある。例えば、何回か会って話をすると、次第にその人柄が判ってくる。あるいは、仕事の体験を重ねることで、そのコツをつかんでいく。このような学習のプロセスに、記憶の「編集力」が関わってくるのである。
 大脳皮質の側頭葉に記憶が貯えられると、さっそく編集のプロセスが始まる。コンピュータのように何時までも同じ形で記憶が保存されるのではない。過去の他の記憶と関連付けたり、類似点や相違点を比較するなどの無意識のプロセスが進行すると考えられている。
 人間らしい知性は、単純な記憶の再現ではなく、記憶の巧みな編集によって支えられている。記憶の編集力を鍛えることが、人生を豊かにする。
 人生の大切な記憶の、良き編集者になりたいものである。

(日本経済新聞2005年8月11日夕刊掲載)

8月 12, 2005 at 08:20 午前 |

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コメント

こんばんは。
たしかに記憶するだけならロボットにもできるし、DVDレコーダなどにも出来るでしょう。人の脳の素晴らしい所の1つは茂木さんのおっしゃるように記憶を編集して、そこから新たな価値を生み出す力なのでしょう。
いきなり「SONY」ネタでハズカシイのですが、私は2年前から「クオリア東京」ショップに週一回の割合で訪れています。
そこのコンシェルジュの方々と製品の体験をする以外にも、いろいろな世間話をよくします。で、やはり話をしているうちに、お互いがどういう存在なのかがわかってきて、今では、彼等とかなり仲良く話が出来るようになりました。SONYの話をしたり、アスベストやバンドの話をしたりというふうに。
また記憶したことに基づき、いろいろなイマジネーションが働くこともあります。これも記憶の編集力からくるのに違いありません。
人がこれまで生み出してきた数多の芸術も、記憶の巧みな編集力に基づく豊かなイマジネーションによって築かれていったのかもしれません。

投稿: 銀鏡反応 | 2005/08/12 20:00:17

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