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2005/08/09

解散詔書

実をもうせば、というのも何だが、
私は今までの国政選挙、ないしは首長選挙、
地方議会選挙で、一度も自由民主党に
投票したことがない。

 私は1962年生まれだが、
ある時期まで、「自民党なんかには入れない」
というのは、いわゆる「インテリ」の
矜持であった。
 ベルリンの壁が崩壊する頃までは、
日本共産党に投票するのは、周囲
の仲間の間ではごく普通の振る舞いだったように
思う。
 そのあとは、社民党や民主党が
「良識派」の投票の受け皿になってきた
ことは、皆さんもご存じの通り。

 しかし、このところの政争、
とりわけ、昨日の参議院での
否決騒ぎを見ていて、生まれて初めて、
「次は自民党、というか、小泉自民党に
投票するかも」と思うようになった。

 民主党には失望した。今回の事態を、
「衆議院解散ー>政権奪取」
という機会主義者(オポチュニスト)にとっての
「千載一遇のチャンス」だとしか
とらえていない。

 実は、杜子春ではないが、私は、
参議院で郵政民営化法案が否決されそうに
なった時に、民主党の一部ないしは全部が
swingして賛成に回るようだったら、少しは
見所があるなと思っていた。
 それが、守旧派に与して改革を
実現しない。
 これじゃあダメだ。ロゴスがない。

 そもそも、今回の民営化が拙速だというが、
これだけ国会で論議をして、しかも
「郵政民営化居士」の小泉が首相になってから
4年もかけて、
 ようやく法案提出にこぎ着けたのに、
これ以上どう時間をかけろというのか?
 政治というのはプラクティカルな
妥協の産物のはずである。
 今の法案に欠陥があるというのなら、これまでの
プロセスで修正すれば良いはずのことではないのか?
 その機会を逃しておいて、何を言っているのか
という感じである。
 あと何年かければ良いというのか。
 そういうスローな感覚だから、なるほど
日本の財政が破綻するはずである。
 ピンの上に天使が何人立てるかと言った
形而上学を論じているわけでもあるまい。

 反対票を投じた議員を公認しない、
という小泉の方針は筋が通っている。
 アーティストの椿昇さんが、
メールで、小泉を織田信長にたとえていたが、
(つまり、公認されない可哀相なというか
自業自得の人たちは比叡山というわけです)
 このようなロジックが通った、
ドラスティックなことをする人は
確かに日本の政治史上最近はなかった。

 今後の政治状況がどう変わるか
判らないから、何とも言えないけれども、
 とっとと郵政民営化法案を通して、他にも
重要な政策課題はあるんだから、
それらに取り組んでいって欲しい。
 小泉くらいロジックの通った人が
いないのならば、
 当分小泉でもいいんじゃないか。

 そもそも、戦後日本は首相をコロコロ
変えてきたけれども、意味が分からない
というか、
 いかにも一部の湿っぽい雨日本人の間にある
「まあ、君も、首相にまでなったんだから、
そのなんというか、首相という希少な
ポジションをだね、いつまでも
自分で独占していないで、まあ、その、
仲間にも分け与えるくらいの、そういう
度量があってもいいんじゃないかね。
2年やったんだから、そろそろ首相とか、
元首相とか言われる名誉をだね、
つまり私にも少しわけてよ、おねがい」
みたいな嫉妬と悪平等主義に基づく
わけのわからない理屈でたらい回しに
して来たのではなかったのか。

 Serendipityという言葉をつくった
Horace Walpoleのお父さん、Robert Walpole
は1721年から1741年まで、20年間
イギリスの「首相」をやっている
(もっとも、この頃は非成文憲法の国らしく、
「首相」という制度自体がオフィシャルな
ものではなかった)。
 近年では、日本の首相がサミットで
ころころ変わっている、という印象を与えているのは
周知の通り。

 9月11日にどのような投票行動に
出るか、私にはイデオロギーも支持政党も
ないので判らないが、とにかく昨日は
以上のようなことを思ったのだった。

 解散詔書が朗読される瞬間を生で
見ていたが、ああいうのは血が沸き立つ、
というか、何ともいいものですね。
 案外国会議員はああいう瞬間が
堪らなくてやっているんじゃないのか。

The Qualia Journal
Japan's postal reform is halted

8月 9, 2005 at 04:40 午前 |

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 以下文中「$3,000bn」と言うのは言わずと知れた「Japanese sav [続きを読む]

受信: 2005/08/18 14:17:38

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 以下、重要な記事と判断し、また現下の緊迫化した政治情勢にかんがみ、全文引用しま [続きを読む]

受信: 2005/08/23 19:22:06

コメント

SHさんコメントありがとうございます。
なるほど、国民全体のロゴス度はむしろ低下しているのではないかと
いうことですね。その通りかもしれません。
それが議会制民主主義固有のモラル・ハザードかもしれませんね。

投稿: 茂木健一郎 | 2005/08/12 8:38:19

今回、茂木先生はロゴスという概念を使って現在の日本の政治について論評していらっしゃいます。私は、この概念を政治批評において使用した場合にかなり注意を要すると日頃から感じております。先生は、小泉氏個人の言行の首尾一貫性と、日本の従来的な政治家の集団的活動の首尾一貫性のなさを比較して、小泉氏がロゴスを発揮していると判断なさっているようです。アリストテレスのデ・アニマや形而上学を多少かじって私が理解したところでは、ロゴスとは、それ自体としては必ずしも首尾一貫しているわけではない多数のアクターの集団的活動の結果として、その集団の活動を全体として見ている観察者に対して現れてくる、集団に帰属する性質だと思っています。つまり、ロゴスが帰属されるためには、ある首尾一貫した振る舞いを見せている活動体の背景に、多数の要素的アクターの極めて複雑な活動が透けて見えるのでなければならないのではないかと思います。個々の人間がロゴスをもつ動物であるのは、個々人の行為の基盤となっている脳が特にロゴス的性質をもっているからだと考えられるのではないでしょうか(もちろん身体や環境等もアクターとして重要ではありますが)。このようにロゴスを理解すると、たとえ一国の首相である小泉氏がロゴスをもっているように見えるとしても、それが日本の政治活動の全体のロゴスの上昇には必ずしも貢献しない可能性があると言えるのではないでしょうか。私は小渕氏が首相であった時代から外国暮らしをしておりまして、昨今の日本の政治・文化風土についてかなり疎くなっております。したがって私が誤った見方をしている可能性は高いとおもわれます。そのような私には、小泉氏が首相になって以降、日本の政治の全体的な行動パターンの分かりやすさ(ある種の首尾一貫性)は上がっていると思いますが、その背景となる個々のアクターが示すべき活動の複雑性は著しく低下しているように見えます。この点で、日本の現在の政治はロゴスを欠いているように見えます。もしも小泉氏が自身の秩序感覚に従って他のアクターの活動を強引に抑制し続けているのだとすれば、日本の政治全体は病理的状態に陥っているとさえ言えるかもしれません。私の現状認識が誤っているのならば大変喜ばしいことです。いづれにせよ、私はかなり懸念をもっております。

投稿: SH | 2005/08/11 19:45:12

冷静になって考えてみると、
「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域」などの発言をしてきた小泉首相に「ロジック」があるとは、どうしても思えないんですよね。
たしかに今回の件だけは、小泉首相がスジを通したと認めますが、法律を無視して(必要な手続きを取らずに)自衛隊をイラクへ派兵するなど、これまでスジの通らないことを数多く行ってきたのに、今回の件だけで「これまでのロジック無視を全て帳消し!」にはできません。
私は「政治にはロジックが必要」と考えるからこそ、これまでの小泉自民党政治を振り返り、「やはり自民党には投票できない」という結論に至りました。

投稿: カナリア | 2005/08/10 2:14:33

私も今まで、いろんな首相の記者会見を聞いてきた中で、昨日の小泉さんの記者会見が一番分かり易かったというのか、理に適っていると思いました。中には「小泉首相はヒットラー」とか「変人以上」などと言った自民党の大物政治家もいましたが、「あなた達の方が余程変人だろう。小泉さんの方がまともだよ」と言ってやりたくなりました。
 9月11日が、旧式の考え方しか出来ない
「自称大物政治家」の在庫一掃セールのような一日になってほしいですね。


投稿: 水瓶座 | 2005/08/10 0:34:16

今回もそうでしたが、解散がウワサされる度にそれに反対する政治家やメディアが使う決まり文句に「国民のためにも、ここで政治的空白をつくるべきではない」というのがあります。
あれが言われるとき、その「政治的空白」がどういうもので、どんな負の影響を国民に及ぼすのか、その内容をきちんと語る人をほとんど見ません。言っている人がその内容を本当に理解しているのかも疑問です。中身の詳細はとりあえず、そう言っておけば良識があるフリができるだろうとタカをくくられているような気がします。「政治的空白」というフレーズを使うことで「何となくわかったような感じ」を醸し出せるとでも思っているのでしょうか。今回はああした「一見説得力ありげに見える」もの言いに惑わされることなく一票を投じたいと思います。

投稿: shibano | 2005/08/10 0:06:52

心理学的にみれば簡単なこと。

反対した人は、小泉さんみたいにヒーローになりたいが、派閥や支持者などの制約のためになれないというジレンマを感じている人。

政治はボノボ程度の心の理論と社会性で成り立っていますね。

150人を超えた人はまとめららない則は生きている。
衆議院は過半数取るために150人の倍以上とらないとだめなように400人越えの定数になっているのは非常によくできていますね。
参議院のように150人未満をすぐにまとめられるのは簡単ですから。

投稿: ぬろ | 2005/08/09 23:33:13

ぼくも民主党にはガッカリしましたね。
法はかなりボロボロにいじられて
しまっているようだが…。
それにしても、納得出来ません。
何かの利権にぶら下がっている
ような印象さえ受けてしまう。

コイズミは好きではないが、
今回は彼が一番筋を通しています。

投稿: 長谷邦夫 | 2005/08/09 21:21:16

たびたびすみません。
さっきのコメントの補作です。

ある哲人が
「青年は心して政治を監視せよ、
政治家を監視せよ」
との言葉を残しました。
私は真の民主主義を日本に花開かせる為にも、この哲人の言葉のように、政治家、そして政治を監視しつづけたいとつねづね心がけて行きたいと思っています。

投稿: 銀鏡反応 | 2005/08/09 19:20:43

こんばんは、またおじゃまします。

私も民主党には失望しております。彼等には、茂木さんのいうロゴスがありません。民衆の為にという目的感も、政治家としての使命感も感じられません。
彼等はただ政権を奪取することで、それまで小泉政権以前の自民党が長年吸ってきた利権の甘い汁を、今度は自分達が吸おうと企んでいるのです。
私は郵政民営化に反対票を投じた議員等だけでなく、民主党のようなロゴスのない野党の議員たちにも一票も投ずるツモリはありません。
むしろ、大衆の中に進んで入り、大衆の声無き声を聞き、その声を国政の場に届け、文字通り「国民のしもべ」として働く真の「政治家」と呼ぶべき人にしか投票いたしません。

投稿: 銀鏡反応 | 2005/08/09 19:15:17

>案外国会議員はああいう瞬間が
堪らなくてやっているんじゃないのか。
 少なくとも、小泉首相だけは、とても楽しそうでした。

投稿: yfujita | 2005/08/09 12:38:17

 私の身の回りでは、反小泉的な意見をよく聞くので、このような話は大変刺激になります。かく言う私には今の政治をとやかく言えるほどの造詣は無いのですけれど。

 監視する人がいないと堕落するので、監視する人が現れると、今度はその人を独裁者だという。
 民主主義というのは人間の良心に頼るところが大きいなぁ。
 人間の根本的な悪い部分の幾らかだけでも、1ランク上の次元へ昇華させてやる事が出来れば、民主主義もかなり息を吹き返せるように思うのだが…

投稿: cosmos | 2005/08/09 12:13:36

いかにも一部の湿っぽい雨日本人の間にある
「まあ、君も、首相にまでなったんだから、
そのなんというか、首相という希少な
ポジションをだね、いつまでも
自分で独占していないで、まあ、その、
仲間にも分け与えるくらいの、そういう
度量があってもいいんじゃないかね。
2年やったんだから、そろそろ首相とか、
元首相とか言われる名誉をだね、
つまり私にも少しわけてよ、おねがい」
みたいな嫉妬と悪平等主義に基づく
わけのわからない理屈でたらい回しに
して来たのではなかったのか。


の部分を茂木さんはどのように英訳するのかを見てみたいです。
茂木さんの文章って読んでいて安心感があるんですよねえ。ああ、ちゃんとわかっている人がいるっていう。

投稿: nanashi | 2005/08/09 11:47:51

「小泉くらいロジックの通った人が
いないのならば、
 当分小泉でもいいんじゃないか。」

いないのが悲しいですね。国会議員全員の首尾一貫性がノーベル賞受賞者並ならこの国の政治は世界一のレベルになれるのに・・・

投稿: NS | 2005/08/09 8:54:50

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