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2005/08/15

文脈の自由、偶有性の空間。

 筑摩書房の増田健史と一緒につくった「脳」整理法
は9月4日発売予定で、アマゾンではもう予約 
が始まっている。

 増田健史の発案でこの本には「著者近影」
を含めさまざまな面白い仕掛けがしてあるので、
 ぜひ手にとってくださったらと思う。

 最初は手軽なノウハウ本になる予定だった
この本だが、書いているうちに、やっぱりと
いうか、ずいぶんシリアスなものになってしまった。
 この中で、「国家」のような公共的概念が、
その本来の「偶有性」(どのように変化
するか判らないこと)を失って、
 大文字の固定的な概念になってしまう
ことの危険性を論じている。
 
 「日本」という国家だって、「日本人」
というくくりだって、本来起源においても
未来の行く末においても偶有的なもので、
 それを固定化してそれに固執する
メンタリティーが、多くの災厄をもたらしてきた。

 国境だって、偶有的である。
 それを固定化してきっちり決めようとするから
教条主義になる。
 はっきりしないところは放っておけば良いのだ。

 創造的な人は、だいたいにおいて、
偶有性(どうなるかわからないこと)を大切にしている。
 そのことは、会って話していればピンとくる。
 一方、教条主義の人はいわば文脈の中の蛙であって、
精神を硬くして動こうとしない。
 それを自分で勝手にやっているうちには
いいんだけれども、 
 国家とかそういうところに関わるように
なると本当に困る。

 戦争は、基本的に教条主義で行くしかない。
だって、まず「敵」、「味方」をはっきり
させなければならないし、
 指揮命令系統も明確に定めなければならない。
 軍紀違反は厳格に処罰される。
 それは、日本だけじゃなくて、アメリカでも
イギリスでも同じことだ。

 そういうのが好きな人というのは世の中に
いるものだが、
 私はすぐに白けてしまう。
 そういうのと、創造性は違うからだ。

 しかし、本当に戦争になったら、白けている
ばかりでもいられない。
 だから、文脈の自由、偶有性の空間を保っていく
ことが大切なのだ。
 基本的に、戦争と創造性は相容れない。
 戦争が好きな人は、創造性とはもっとも
縁遠い人だと言っても良い。

 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトが
もし戦争に巻き込まれていたら、 
 彼はどのように事態をやり過ごしていたことだろう。
 だって、やり過ごす以外に他にやることは
ないからね。
 
 60回目の終戦記念日に、そんなことを思う。
 インターネットがスモール・ワールド・ネットワーク
で世界を結ぶ時代には、
 偶有性との幸福な出会いこそがふさわしい。

8月 15, 2005 at 07:44 午前 |

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それにしても、とおもう。  想像の共同体の極北のようなインターネットコミュニティ(の一部。日本語圏のさらに一部)では「偶有性との幸福な出会い」がなかなか見つからない。 インターネットが言語空間を覆い尽くすことによって、それが固定化してしまうからだろうか。...... [続きを読む]

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バブル  あの頃に比べ様もないけれども40〜50%も値を上げたでもピーク時に比べれば30%程度でしかない。税制優遇された中間配当金にて「雀の涙」でお買い物 [続きを読む]

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受信: 2009/08/27 15:47:26

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受信: 2009/08/27 15:49:56

コメント

初めまして。テレビ・雑誌・本でいろいろなお言葉を拝聴&拝読させていただいてます。

少し前のBIG ISSUEで茂木さんの記事を見つけ、そこからいろいろなことを考えるきっかけをいただきました。ありがとうございます。トラバさせていただきましたが、誤って2度してしまい、すみません。

ご挨拶が遅くなりましたが、取り急ぎお礼まで。

投稿: ぱぐ | 2009/08/31 23:25:58

送信がダブってしまいました。スミマセン。

先生のご著書「脳と創造性」を、読んでみたいと思っています。

それにしても、思考の世界も、それだけで

奥深い森のようで、迷い道、寄り道も楽しいものかもしれませんね…

お散歩しながら、何かがひらめくことがあると

どなたかノーベル賞を受賞した科学者の方が
おっしゃっていたような気がします…

投稿: TOMOはは | 2005/12/15 11:47:20

遇有性…と、創造性・・・このことは、とても気になりますね…

まずは、記憶について質問です。

(かなり素朴な疑問なので、“もっと勉強してから来い!”と叱られそうですが…)

個人の経験にもとづく記憶が、脳の引き出しに入っているのはイメージできますが

ユンクの言っている「集合無意識」があるとしたら
それは、どうやって人の脳に蓄えられると考えられているんですか?

人は、自分の脳の中にあるものだけで
何か新しいもの・ことを生み出すことって、できるんでしょうか?

何かに触発されて・・・ということは、確かにイメージできますけれど…

私の頭の中で、創造性ー記憶ーユンク ……

(思考回路の中を電気信号がはしっている・・・・?)

さらに、もうひとつワープして、

私の心の中にいつも住んでいる
クリシュナ・ムルティのことばが浮かんできます。

思考の中に、新しいものは何もない

自由で新鮮な精神で問題をみつめる

人は、最高度の感受性が、英知(叡智?)であることを理解する

・・・・クリシュナ・ムルティのことばのもつ響きがとても好きです。

けれど、ほんとうに言わんとするところは

ことばの中にはおそらく見つけられない…

そんな気がしています…

投稿: TOMOはは | 2005/12/15 8:34:35

遇有性…と、創造性・・・このことは、とても気になりますね…

まずは、記憶について質問です。

(かなり素朴な疑問なので、“もっと勉強してから来い!”と叱られそうですが…)

個人の経験にもとづく記憶が、脳の引き出しに入っているのはイメージできますが

ユンクの言っている「集合無意識」があるとしたら
それは、どうやって人の脳に蓄えられると考えられているんですか?

人は、自分の脳の中にあるものだけで
何か新しいもの・ことを生み出すことって、できるんでしょうか?

何かに触発されて・・・ということは、確かにイメージできますけれど…

私の頭の中で、創造性ー記憶ーユンク ……

(思考回路の中を電気信号がはしっている・・・・?)

さらに、もうひとつワープして、

私の心の中にいつも住んでいる
クリシュナ・ムルティのことばが浮かんできます。

思考の中に、新しいものは何もない

自由で新鮮な精神で問題をみつめる

人は、最高度の感受性が、英知(叡智?)であることを理解する

・・・・クリシュナ・ムルティのことばのもつ響きがとても好きです。

けれど、ほんとうに言わんとするところは

ことばの中にはおそらく見つけられない…

そんな気がしています…

投稿: TOMOはは | 2005/12/15 8:33:35

初めまして
税制優遇のおこぼれの
その先に
導かれた著書を
引用させていただきました
感謝致します

追伸
文脈は怪しげです

投稿: 松尾の蛙 | 2005/12/14 9:46:26

始めて投稿します。音楽家です。

>基本的に、戦争と創造性は相容れない。
>ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトが
>もし戦争に巻き込まれていたら、 

著書「脳と創造性」もそうですが、
創造性の本質をとてもユニークに表現されていることに
感嘆致しました。

投稿: 江村哲二 | 2005/08/15 11:20:14

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