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2005/07/24

アウェーの戦い

7月10日から英文のblogをずっと
書き続けている
 (この日本語による「クオリア日記」の最後に
いつもリンクを付けている)。

 手間がかかると、言っても、私は書くのは
早いので(ほとんど物理的にタイピングする
時間しかかからない)それほど負担でもないのだが、
このような面倒なことを始めたのは
 ある危機感と決意がある。

 危機感というのは、昨今の日本の状況である。
 著名な、尊敬すべき出版社からも、特に
雑誌を中心として、目をおおいたくなるような
下品な見出しの記事が出版されている。
 それが、特に近隣諸国に対する罵詈雑言
であるときには、
 著者の見識を疑うとともに、
 「どうせ日本語で書いているんだから、
日本人しか読まないじゃん! おまえら
内弁慶でズルイよ」
と思うのは自然なことだろう。

 ホームじゃなくて、アウェーの戦いをしないと、
面白くない。
 このところ、自分のホームに引き込んで、
ぴぴたん、ぴぴたんしているヒトばかり
見てきたので
 いい加減うんざりしているが、
(こっちは、君のホームに合わせている
だけなんだよ!)
 自分がアウェーにならざるを得ない状況で
どれくらい創発できるか、が人間の勝負になる。

 だから、オピニオン誌などで日本人しか
どうせ読まない記事を日本語で垂れ流して
威勢の良いことをいっている立派なおじさま
方は、ぜひ近隣諸国にいって、アウェーの
戦いをしてきていただきたいとおもう。
 それでも同じことが言えるんだったら、
その時はじめて真面目に相手にしてあげる
ことにする。

 ともかく、英語で日常のことを書き連ねようと
すると、突然アウェーの戦いになることを
自覚させられる。
 だって、「三木成夫」って言ったって、
日本の文脈と英語の文脈ではぜんぜん違う。
 胎児の発生にともなう生命記憶の話を、
英語で不用意に書けば単なるオカルトになって
しまうのであって、
 それでは、どのような文脈で三木成夫は
日本で受け入れられているのか、そのあたりを
自覚的に記述しないとお話にならない。

 おもえば、自分たちのよって立つ基盤を、
「まあまあ、そのところはまあ適当に、
だって、わかるでしょ、ね」
というなれ合いで済ませるのではなく、
まったくバックグラウンドの異なる
人たちに一から丁寧に説明する努力を、
日本人は怠ってきたのではないか。

 だって、そりゃそうだよね。日本語で
書いている限り、日本人しか読まないんだから、
 身内の論理で済むわけだから。

 別に英語が偉いと言っているんじゃない。
 英語なんて別にどうでもいいけど、
違う文脈の中でアウェーの戦いをしないと、
人間精神は鍛えられないと思うのだ。

 日本人よ、身内の論理の中でまどろむのは
やめましょう。
 立派な出版社から出ているおじさん雑誌も、
あまり目を覆いたくなるような醜い見出しを
付けるのはやめませんか。
 単なる自己満足に過ぎないんですから。


 私は、伊勢神宮は好きだし、小津安二郎や、
夏目漱石、本居宣長などの偉人の業績も愛し、
誇りに思っている。
 しかし、それを、「アウェー」の中で
いかに普遍化していくか、
 そのようなことをそろそろ真面目に考えないと、
 私もダメだし、日本もダメだ。

 しんどいことだけど、自分たちが慣れ親しんだ
さまざまな価値、文化を、操作可能で普遍的な概念
に置き換えていく努力をしていかないと
いけないだと思う。

The Qualia Journal
Ozu's Tokyo Story

7月 24, 2005 at 08:55 午前 |

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そうそう、そういうことなんだよ、と茂木さんのblogエントリーを読んで思ったのです。僕の場合は共著者がネイティブ米語人ということもあって、ほとんどの論文を英語で書いています。日本語を使って実験を行ったときには、使った形容詞の日本語としての意味を英語で説明しないといけなくなるのですが、日本語で「うるさい」と言ったときと英語で「loud」と言ったときでは意味合いが異なるのです。そういう意味の違いまで書かないと(「loud」ではなく「annoyingly loud」にしたとか)読む方は分かってくれないだろ... [続きを読む]

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茂木健一郎 クオリア日記に「アウェーの戦い」と題する記事が載りました。こういう話を読むと、「ニューヨークタイムズの大西記者」に対する批判のことを思い出します。... [続きを読む]

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コメント

あくまでこれらは一部ですが、高名な出版社から出されている各種雑誌の中吊り広告を見ていると、近隣諸国への罵詈雑言以外にも、特定の有名人、有名団体への誹謗中傷も見だしになっており、まさに言われる通り、眼を覆わんばかりで御座います。
私はこういう見だしを掲げる雑誌類は、たとえ
文学全集を出しているような高名な出版社から出たものであっても、「悪書は読むな、頭が腐るから」(でよかったですか?)との金言を残した文豪・武者小路実篤に倣い、かかる悪書に絶対に手を出さないことにしています。

投稿: 銀鏡反応 | 2005/09/10 22:06:38

おっしゃる通りですね。
英文のものを拝読し(といってもぼくは
高卒でろくに英語が読めませんが)
あ!まだ少し理解できるって、ちょっと
嬉しくもなりました。

明快に書けていて素敵だと思ったんです。
こういう文章を英語の教科書で読みたかった。
(オー・ヘンリイは単語が厄介でした。)

マンガ研究の世界も、交流が始まり
英文発信の必要性を感じています。
理事仲間の秋田孝宏さんが、自分の
で作られている日本のマンガ・データを
英文でもネットにアップされておられます。

投稿: 長谷邦夫 | 2005/07/24 9:59:05

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