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2005/05/14

Nicholas Humphreyとの議論

午前中は静かに仕事をしていた。
空気はchillyで、外にいるのはつらいので、
室内の止まった空気のなかにいる。

午後早く、Nicholas Humphreyの家にいった。
Cambridge Univerity Botanical Gardenのすぐ
横にある。

Nickは、London School of Economicsの
school professorであるが、Cambridgeに
住んでいる。

 ハンフリーの本はいくつか訳されているので
読んだ人も多いだろう。

 私が最初にNickを知ったのは
ケンブリッジに留学していた95年から97年
の頃に読んだSoul Searchingを通してで、
その頃、Nickはscepticの立場からparapsychology
を調査する活動をしていた。

『獲得と喪失』(The mind made flesh)が
最新の翻訳である。

 この中で、ハンフリーは、氷河期に描かれた
洞窟絵画について、現代人で言えば自閉症のサヴァン
に相当する能力によって描かれたのではないかという
説を提出して物議をかもした。
 ある考古学者から、「考古学をやっていることの
楽しみの一つは、ありとあらゆる奇妙な考え方に
出会うことができることだ」と揶揄されるなど、
大変controversialなのだが、その話を
まずした。

 それから、ハンフリー自身のmind-brain problem
についてのstanceについて聞いた。
 ハンフリー自身は、Daniel Dennetのように
functionalistであるが、しかし、dualismを信じる
こと自体が、進化論的に見て適応的なのだろう、
という考え方だった。

 Dennetのように、「魂と物質が別だ」
と考えるのは、機能主義的に見て、
むしろ恐ろしい間違いだというのである。

 人間が単なる物質の塊ではなく、
精神を持ち、ひょっとすれば死後の世界を
持つと信じることで、 
 人々は自分や、他者を大切に扱い、
そのことが文化活動を含む様々な人間の
ユニークさにつながった、というのが
ハンフリーの基本的立場である。

 もし、「自分たちが単なる物質であり、
精神などなく、死後の世界もない」という
認識が生じると、人間は、他の動物と違って、
完全な絶望に陥る可能性があるとNickは言った。

 懐疑主義者としてのparapsychologyに
対するスタンスでも、むしろ、『奇跡』を
信じるという人々の態度が、宗教の起源に
おいて一定の機能主義的な役割を果たしたの
だろう(キリストを含めて)というのが
ハンフリーの考え方だった。

 人間の意識の起源自体を、Nickはmetacognition,
いわゆる"inner eye"というメタファーで説明
するが、
 その意義もまた機能主義的文脈において
とらえる。
 つまりは、他人とのコミュニケーションにおいて、
他者の『心の理論』を立ち上げる上で
 そのような認知プロセスが必要だったのだろう、
というのである。

 Botanical Gardenに移動して、話を続けた。
ここには、ニュートンのリンゴの子孫があり、
Trinity Collegeの前にあるものよりも
大きく、花を沢山つけていた。

 それから、Nickのallotmentに行った。
allotmentというのは、申請すれば誰でも
借りる権利がある農地のことで、
 年間10ポンド払うとかなり大きな土地を
耕す権利をもらえるのである。

 Nickに別れを告げたあと、
Grantchester Villageの中にあるThe Orchardに
行って、紅茶を飲んだ。
 たくさんのリンゴの木があり、
その中に緑のテーブルと椅子が散在している。
 となりには、作家のJeffrey Archerの
家もある。

 日曜日に、CambrdigeからGrantchester meadow
を歩いてきて、このOrchardでお茶を飲んだり、
あるいはGreen ManやRed Lionといったpubで
ビールを飲み、食事をする、というのが
伝統で、
 Bertrand Russel, Ludwig Wittgenstein,
Allan Turing, Virginia Wolf, Stephen Hawking
といった人たちがいろいろものを考えながら
この辺りを歩いた。

 風邪は大分良くなってきた。
 今泊まっている少し郊外のホテルの窓からは、
野ウサギが走っているのが見える。

5月 14, 2005 at 02:32 午後 |

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受信: 2005/12/03 1:43:54

コメント

> この中で、ハンフリーは、氷河期に描かれた
>洞窟絵画について、現代人で言えば自閉症のサヴァン
>に相当する能力によって描かれたのではないかという
>説を提出して物議をかもした。
> ある考古学者から、「考古学をやっていることの
>楽しみの一つは、ありとあらゆる奇妙な考え方に
>出会うことができることだ」と揶揄されるなど、


すでに御読みでしょうけれど、精神医学者である中井久夫氏の分裂病神話者、
じゃなかった、分裂病親和者はなぜ子孫を残せるのかの仮説。それに関係して
くる話だと思います。氷河期を生き残る人類は、徴候に敏感でなくてはならなかった。

分裂病と人類 UP選書 221 中井 久夫 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4130020218/qid%3D1116092031/249-3580410-6956335

分裂病と人類 狩猟 Google
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E5%88%86%E8%A3%82%E7%97%85%E3%81%A8%E4%BA%BA%E9%A1%9E%E3%80%80%E7%8B%A9%E7%8C%9F&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=


一部の医者達のグループが、分裂病呼称は差別で統合失調症と改名した。

だがこれには問題があると思われる。物理学者達が、この世の力として確認されて
いるものを、{電磁気力・大きな力・小さな力・重力}の4つとして、理論を統合しようと
するがごとく。見逃したピース(未発見の力)をそのままに、ジグソーパズルを
完成させようとすると、平面完成、或いは地球儀上完成のジグソーパズルの
土台の方をゆがめ、個々のピースだけで、面が埋まるはずだと、

統合できるはずだと求めるように。

戦争屋なら、得られた情報を基(もと)に戦うことはしない。
得られなかった情報にも、己のビッコな特性や、敵の作為を詠む。

ある意味、分裂病患者(現代に適応不可・3年寝たろう的なもの)を差別しているのは、
呼称改名したもの達、そのものであると、俺には思える。

故に、現代に特化した一部の医者グループや物理学者達は、
患者として、ではなく、患部(幹部)と見做さなければ
ならないだろう。

それを批判しても始まらない。過度な統合を求めるでなく、

その中から、気づきによって、得た情報(選らされた情報)で突っ走ってしまう
若手参謀から、己を古株の参謀にできる物理学者を求める。

最前線の認識、そこでは日々、見逃したピースに接触する脳学者なら、
脳学者は、適任であろう。

投稿: zion-ad | 2005/05/15 2:40:46

>「自分たちが単なる物質であり、
精神などなく、死後の世界もない」という
認識が生じると、人間は、他の動物と違って、
完全な絶望に陥る可能性がある
もし、精神などなく、死後の世界も感じなければ、
絶望は感じない。
下等動物ならば、痛みも感じない。
しかし、私達は、痛みと繋いだんだ。
だから、その痛みを信号処理した。
最初は端子で繋ぎ、次にシーケンサー、後からコンピュータも繋いだ。
そうやって、痛みというものを作り上げた。
生存競争の成れの果て。
生物の効率を求めた結果。
それも後からつけた言い訳か?
最初から理由は無かった。
そうやって繋がったものが、今あるだけだ。

今考えれば、過酷だったということになる。
だから、そこから、逃げたかった。
聖書は、100%全て嘘が書かれています。
今、手に入らないものを書いています。
誰の手元にでもあるものを書いても人を引き付けまとめる何の魅力にもなりません。
1つも本当のことは書かれていません。
全くの作り話か、絶対に加飾がされています。
過酷な歴史の中で、人の希望が絶対にそうさせています。

目の前に実体は無い。
何かに繋がっているだけだ。
今見ている、この視界も。
これまで、気がつかなかった。

クオリア天動説をこれから唱えようと思う。

投稿: バターロール | 2005/05/14 18:42:19

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