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2005/04/30

局所的メカニズムがグローバルな適応を支える(Research)

Spatio-temporal dynamics of the visual system revealed
in binocular rivalry.
Taya, F. and Mogi., K. Neuroscience Letters, in press.

田谷文彦(ソニーコンピュータサイエンス研究所、大阪大学)
茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所、東京工業大学)

 両眼視野闘争は、左の目と右の目から異なる刺激を入れた際、意識の中でそのどちらかが優先される現象であり、能動的視覚(active vision)のメカニズムや、意識の中で様々なクオリアが感じられるプロセスについて深い洞察を与えると考えられている。
 従来、両眼視野闘争の研究は、視野中の狭い領域内での二者択一的な条件下で行われることが多かった。今回、田谷と茂木は、動く円の刺激を用いた際の両眼視野闘争について、「時空間サンプル法(spatio-temporal sampling method)」という新しい手法を用いて、眼優位性(ocular dominance)が変化する様子の時空間パターンを再現することに成功した。
 得られた時空間パターンは、あたかも円の動きを予言するかのような複雑な適応的振る舞いを見せる。その一方で、眼優位性の時間変化は、円の動きに先立つのではなく、むしろ少し遅れて現れることが明らかになった。
 このような、一見矛盾するかに見える現象の背景にある神経機構を明らかにするために、単一の動く円を提示した時の局所的な目立ちやすさ(saliency)に基づくモデルから、複数の円を提示した時の眼優位性の振る舞いがどの程度予測できるかを検証した。その結果、円の複雑な動きに合わせ、高度の適応を見せているかに見える眼優位性の時空間パターンは、局所的なメカニズムの積み重ねで説明できることがわかった。
 両眼視野闘争は、大脳皮質の限られた計算資源を競合する刺激に対して割り当てるプロセスであると考えられる。今回、一見複雑な適応性が局所的なメカニズムの積み重ねで説明されることが明らかになったことは、能動的視覚(active vision)の研究だけでなく、意識の神経機構の謎にも多くの示唆を与える。

pdf file

http://www.qualia.csl.sony.co.jp/person/kenmogi/publications2005/tayamogi2005a.pdf

4月 30, 2005 at 01:54 午後 |

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コメント

「石鹸膜の上のカラフルな干渉縞の模様がリアル・タイムで変化する様子に似ている」と、茂木健一郎著『クオリア入門』(2006 ちくま学芸文庫)p.140に書かれていますが、この現象は、縦縞ないし横縞の「意味」を被験者が学習しない限り(例えば実験を中断して「縦縞」が現れたら特定のスイッチを押す等の約束を被験者と取り交わす)永遠に続くのでしょうか、それともある程度の時間が経過すると安定的な両眼視野闘争の結末(どちらかがsupressされて縦縞または横縞として認識される)に自然に到達するのでしょうか、教えて下さい。

投稿: Eiji Furuyama | 2006/08/28 8:59:16

両眼視野闘争は意識が関わらないと成立しないのですか?サブリミナルなプライム刺激として両眼視野闘争の刺激を用いたらどうなるのでしょう?

投稿: なさ あすかい | 2005/05/01 14:54:15

帯域が少ないと、情報の効率を上げようとする。
今のPHSがそうだ。もちろん圧縮のコストがかかる。一長一短です。
男性の脳梁が女性より細いため、より専門化し通そうとする。
そのため、よりスペシャリスト化する傾向になる。
女性は視界が広いグローバリスト化する傾向になる。
女性は一つの大きな共通の要素が大きいので、そうなる。
もちろん、他の要素もあるので、クロスオーバーする。
最近、こんな風に感じているこの頃です。

投稿: バターロール | 2005/04/30 21:57:40

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