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2005/04/30

報酬の期待値に対して中立的な人間の行動について(Research)

DYNAMICS OF BETTING BEHAVIOR UNDER FLAT REWARD CONDITION
Onzo, A. & Mogi, K. International Journal of Neural Systems. 15, 93-99. (2005)

恩蔵絢子(東京工業大学、ソニーコンピュータサイエンス研究所)
茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所、東京工業大学)

 生物の脳にとって、食物などの報酬をどのように得るかということは、重要な課題である。従来、「強化学習」(reinforcement learning)などの理論を通して、報酬を得るために脳が発達させてきた認識、行動のメカニズムが明らかにされてきた。
 一方、現実の多くの状況下では、報酬関数は必ずしも明らかではない。それでも生物は何らかの行動を取らなければならない。このような認識の下、不確実性の存在下で、人間がどのように判断し、行動するかを研究する神経経済学(neuroeconomics)の研究が、近年注目されてきた。
 恩蔵と茂木は、被験者がどのような行動をとっても、期待される報酬は一定であるという「平坦報酬条件」(flat reward condition)の下での人間の行動についての実験を行った。行動にかかわらず期待される報酬は一定であることから、外的報酬だけでは最適な行動は定義されない。行動選択がランダムになる可能性も示唆されるが、実際には、人間の行動は過去の履歴を反映した、特定の傾向を示すことが判った。被験者の多くは、自分がそのような行動をとっていることに対して意識的ではなかった。
 平坦報酬条件下での行動パターンに、大きな個人差があることも見出された。これらの結果は、外的な報酬条件と緩く絡み合う、脳内の報酬系を中心とする内部ダイナミクスを反映していると考えられる。
 「どの売り場で宝くじを買うか」「どの銀行に預金するか」など、我々の日常生活の中には、報酬の期待値がほぼ一定であるにもかかわらず、人々がランダムではない行動パターンをとる事例が多く見られる。今回の結果は、このような平坦報酬条件下での人々の意図的振る舞いを支える神経機構についての示唆を与えるものと考えられる。
 木村資生が「分子進化の中立説」で明らかにしたように、適応度と弱い結合しかもたないダイナミクスが、進化の上で重要な意味を持つことがある。脳の感情のダイナミクスの進化においても、中立的属性が重要な意味を持つかもしれないことを、本研究は示唆する。

pdf file
http://www.qualia.csl.sony.co.jp/person/kenmogi/publications2005/onzomogi2005a.pdf

4月 30, 2005 at 01:49 午後 |

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コメント

ダイエットコーラはダイエットにならない。
甘いと感じたものが、それほどのカロリーが無い場合、
通常とはかけ離れた値でキャリブレーションがかかる。
これだけ、甘いのだから、カロリーがあると思ったのに、
そうでもなかった場合、もっと甘いものを取らないと、目的カロリーを摂取できないと思ってしまう。
腸は分子レベルで栄養を選別している。
脳をだますのは容易ではない。

ほうれん草は、時間経過で、栄養素が百倍、千倍単位で変わってくるものがあるそうです。
そんなもので、数字的な献立など立てられるはずが無い。
人の味覚の方があいまいだが、間違いが無い。

どうしてもつながるし、つなげないものでも、つなげようとしてしまう儚いヒストリーです。

投稿: バターロール | 2005/04/30 21:30:43

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