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2005/04/28

忙しさの内実

ここのところ、早稲田での授業の
前後にリーガロイヤルホテルで人と
お会いするのが通例となっている。
 昨日も、いくつかミーティングがあった。
いつの間にか、オフィスになっている。
 
 まずは
 東京財団の野崎裕司さん。
新しく立ち上がる「キャラクター創造力」
の研究会について。
 続いて、兵庫県保険医協会の
広川恵一先生と、高山忠徳さん。
 講演会について。
 最後に、フロンテッジの
三浦鉄也さん、永嶋英和さん。
 あるプロジェクトについて。

 人と会って話すのは、大変勉強に
なるので、楽しい。
 それぞれの人に、異なる
バックグラウンドと専門性がある。
 その中で、コミュニケーションを
とっていくということは、大変
脳に良い。
 
 しばらく前、確定申告の書類を
書いている時は空しかった。
 忙しいといっても、人に会って
話すので忙しいのはまだ良い。
 書類書きで忙しいのは最悪だ。
 脳に何も実質が蓄積して行かないから
である。

 結局、自分が興味があるのは絶えざる
学習だ、
 と気付いたのはどれくらい前のことだろう。
 本居宣長のもとに参集した商人たちが、
自分たちはさんざんあらゆる道楽をやって
きたが、
 いやあ、学ぶことほど楽しいことはない。
 こんなに面白い道楽があるとは
思わなかったと感嘆したと、
 小林秀雄が講演の中で言っている。

 昨日、広沢虎造の「清水次郎長伝」
のCDが安く売っていたので、一気に
9枚買ってしまったが(こういうのを
「大人買い」というのだろうか)
音楽プレーヤーにデータを移し、
 移動しながら、珠玉の名編
「石松金比羅代参」と「三十石船」
を聞くことを思うとわくわくする。

「飲みねえ、飲みねえ、寿司を食いねえ。江戸っ子だってねえ」
「神田の生れよ」 

 何回聞いても飽きない。
 虎造の天才の秘密を探ろうとすれば、
これほど奥深い学習の機会はない。

 学習というのは、別に答えの決まった
ドリルをなるべく早くやる、という
ことではなくて、
 人生の一回性の中、あっ、そうか、
と気がつく創造性もまた
 one-shot learningだというのが
最近の脳科学の成果である。

 だとすれば、学習機会など至るところに
転がっている。
 昨日も、野崎さんや、広川先生や
高山さんや三浦さんや永嶋さんに会って
話しながら、
 あるいは早稲田の学生とmirror testや
small-world networkの話をしながら、
 one-shot learningがたくさんあった。

 タダで世の中のことがだんだん判って
くるんだから、こんなに楽しいことはない。 
 その楽しさがもっと世間に文化として
伝われば、
 視聴率至上主義の民放の番組も
内容が変わってくるはずだ。

 視聴率至上主義は経済原理だから、
別に悪いこととは思わない。
 問題は、何を楽しいと思うかという
文化の方である。
 義務教育は誰でも受けるわけだが、
そこで、学ぶということは楽しいことだ
ということを教えることに失敗しているのだろう。

4月 28, 2005 at 06:23 午前 |

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コメント

ろんさん

ご無沙汰しております。
「トリビアの泉」、私はあまり見たことがないのですが、きっとone-shot learningのよころびの番組なのだろうと思います。

長谷邦夫さま、大学での授業の様子など、ときどき拝見しています。いちど潜り込みたい(笑)。徳川夢声、ちゃんと聞いたことがないのです。今度聞きます!

投稿: 茂木健一郎 | 2005/05/03 6:17:47

虎造の名調子!お聴きになったんですか。
子供時代、祖母が大ファンでよくラジオから
聴きました。
子供でもあのリズムと展開は名人だと
思ったものです。
あとは徳川夢声。もう一度聴いてみたく
なりました。

投稿: 長谷邦夫 | 2005/04/28 21:52:22

>いやあ、学ぶことほど楽しいことはない。
>こんなに面白い道楽があるとは
>思わなかったと感嘆した

私も研究が生業ですが、そんな私でさえ、学ぶ事が楽しいという話し、改めて再確認してしまいました。
茂木さん、ありがとうございました。

脳科学(特に行動実験)で記憶とか学習の実験っていうと、多くの場合、学習を成立させるために強化因子が介在しますよね。甘いジュースを飲ませたりとか、電気ショックをかけたりとか。

だけど、本当の人間らしい「学び」っていうのは、学習そのものが既に正の強化因子として働いているっていうわけですよね。
これって、実に忘れてしまいがちなことです。

トリビアの泉っていう番組がありますが、あれは最もミニマライズされた学習(quarter shot learningぐらいですかね?)をエンターテイメント化したという点で、評価出来ると思うんですが、如何なものでしょう。。

投稿: 龍akaろん | 2005/04/28 9:48:06

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