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2005/04/30

セレンディピティと観察

最近、「観察」(observation)
ということが面白くなって、 
 電車に乗った時など、人の動きなどを
じっくり見ることがある。

 大学院に入った時、指導教官だった
若林健之さんに、科学者というのは
何を観察して研究ノートに書くかが全てだと
教わった。

 だから研究ノートには良いものを使え、
と言われた。
 若林さんは、ケンブリッジのMRCに
留学していて、
 その当時からの慣習で黒と赤の背表紙の
ノートを使っていた。
 数年後、私自身がケンブリッジに留学すると、
みんなこのノートを使っていた。
 読売新聞の「著者来店」の写真で
私が持っているノートがそれである。

http://www.yomiuri.co.jp/book/author/20050426bk01.htm 

Black n' Red といって、
イギリスでは文房具店で普通に手に入れることが
できる。

 「観察」というのは、つまり、自分の主観では
用意できないものを外から取り入れる行為である。
 だとすれば、当然「セレンディピティ」(serendipity)
(偶然幸運に出会う能力)と関係する。
 セレンディピティという概念を思いついたのが、
「経験主義」の国、イギリスのHorace Walpole
であることには深い含意がある。
 自分の思いこみにとらわれて、虚心坦懐に
観察することを知らない人にはセレンディピティは
訪れない。

 観察といっても、必ずしも外部から入力する
刺激だけが対象ではない。
 時には、自分の内部状態(ちょっとした引っかかり
や、違和感、うれしさ、希望、記憶、etc.といった
感覚)を観察することも、同じくらい
重要になる。
 
 こう考えてみると、「観察」という
こと、あるいは「経験主義」ということの
潜在的意味は存外広い。
 経験主義対観念論の対立的図式で
片づけられることではない。

 ここのところ、夏目漱石の『三四郎』が
好きで仕方がないのだが、
 読み返してみると漱石が観察の人だったことが
よく分かる。

4月 30, 2005 at 07:41 午前 |

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今日の夕刊を見ていたら、ビックリした。 以下、がんばって全文引用!! あすへの話題 by 茂木 健一郎先生 @日経新聞−・−・−・−・−・−・−・− ▼『セレンディピティ』(偶然幸運に出会う能力)と言う言葉が、最近注目されている。 ▼もともとは、イギリスの...... [続きを読む]

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茂木健一郎氏のブログ記事(2005/04/30:セレンディピティと観察)に次のようなクダリを見つけた。 大学院に入った時、指導教官だった若林健之さんに、科学者というのは何を観察して研究ノートに書くかが全てだと 教わった。だから研究ノートには良いものを使え、と言われた... [続きを読む]

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コメント

トランペットを吹いております、オリパパこと織田準一です。
ひょんなことから若林さんにトランペットをお教えすることになり、偶然このページに行き着きました。
テレビではよく拝見させていただいていたのですが、まさかこうやってつながるとは思いもかけませんでした。
これから時々読ませていただきます。

投稿: オリパパ | 2007/06/25 22:04:29

すみません。
製品リンクを見逃していました。
おー、こんなノートができちゃっているんですねー。
PCと連携できちゃうノート。
でも、この機能を使っている人はいるのでしょうか? :-)

投稿: Kimball | 2005/04/30 20:25:18

つまらぬことで恐縮ですが、このノートは
横罫線なのでしょうか?それとも方眼なので
しょうか?

とくに小物にこだわる性質(たち)ではないのですが、
最近、ノートは方眼のほうが使い勝手がよいと
おもう、「方眼」びいきものになりました。:-)

投稿: Kimball | 2005/04/30 16:10:20

茂木様、

初めまして。セレンディピティとBlack n' Redという両方のキーワードをみて、コメントを残させていただます。(私も仕事は職業リサーチャーです。)

セレンディピティについては、ちょうど下記の本が出ていまして、訳者の方から直接、贈呈本をいただいたばかりのところです。

『「逆境に負けない人」の条件 「いい加減さ」が道を開く』

この本の結びの章が、セレンディピティについて詳しく述べられています。

もともとセレンディピティはシンクロニシティと組み合わせでよく語られる概念ですが、普段読んでいるこのブログで、いきなりセレンディピティというキーワードを見つけて、びっくりしてコメントさせていただきました。

もしお時間があったら、ご参照ください。

Black n' Redについては、日本ではオフィス・デポで取り扱っているので、私も愛用しています。これと、Lamyの4色ボールペンの組み合わせがあれば、日常のメモ取りにほぼ不自由なく役立っています。

そして、上記の本の訳者の方が本を送ってくださったのも、実は観察日記のような形でいろいろな日々の観察からの考察をブログに開いているためで、教官の方の考えにたいへん共感(!)した次第です。

いくつか重なるキーワードがありましたので、ちょっとまとまりのないコメントになってしまいましたが、感動した思いをつけさせていただきました。

これからもまたいろいろと刺激をこのブログで受けていきたいと思います。

よろしくお願いします。

投稿: ムギ | 2005/04/30 15:43:04

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