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2005/03/26

感情

春になると、さまざまなものが解放されて
くるように思う。
 空気の中に、そこはかとない何かの
香りが漂うようにも感じられるが、
 おそらくはそこここにある何かが
揮発して鼻腔をくすぐるのであろう。

 春は、感情もまた解放する。
 胸の中でいろいろなものがうごめきはじめるのが
感じられる。

 うらやましい、という感情。
 仕事をしていたら、白洲信哉から電話があった。
 京都に向かう車の中から、とのこと。
 富士山が綺麗だった、とのこと。
 それで、要件はといえば、まず花見を
どこでやるか、ということを話した。
 それから、「日月山水図屏風のある寺(金剛寺)
の近くには、絵に似た風景があるんですよ。
もちろん、そっくりじゃあないですけどね。
そこに行くと、ああ、と思いますよ」
と白洲信哉は言った。
 うらやましい、という感情。
 そこに行きたい。しかし、白洲信哉なしで
どうやって探せばいいのか。
 何だか首根っこを押さえられた気がする。

 すまない、という感情。
 夜、増田健史に会った。
 私の「脳」整理法の原稿が遅れているので、
増田健史が筑摩書房内であーだこーだと
言われているとのこと。
 まことにすまない、と思う。
 いろいろなことで忙殺されている日々だったの
だけど、
 ぜひ時間をどーんと取って原稿を書かなくては
と思う。
 もともと書きたい原稿である。
 書きます、すみません。

 楽しみ、という感情。 
 4月か5月に、Penroseに会いにOxfordに
行くかもしれない。
 The Road to Realityがまだ途中なので
読んでしまおうと思う。
 
 落ち着かない、という感情
 研究室の花見をどこでやるか、関根が
選んでいる。
 来年修士に入る星野くんも、イギリスから
帰ってきた。
 早く桜を見てすっきりしたい。

 苦しい、という感情
 意識の非局所性の起源を考えていると
苦しい。
 今「科学」として流通している全ての
言説は
 まったく何の役にも立たないことは
判っている。
 もっともらしい事を言っているやつは
みんなダメだ。
 そのあたりの事情を、きっと生物屋さんは
わからない。
 何しろ世界モデルが違うんだから。
 クリックを天才だと思っているようじゃ
ダメだ。
 実に苦しい。

 美しい、という感情。
 マーラーの『大地の歌』は美しい。
 仕事をしながら聴いているとほろりとする。
 春にはマーラーが素直に聴ける。
彼のマンネリズムも含めて。

 カツ丼が食いたい、という感情。
 春学期は早稲田、聖心女学院、芸大と
週3コマ授業をしなくてはならないから大変だ、という
感情。
 ピエールマルコリーニのチョコの甘さが
恋しい、という感情。
 「文學界」の仕事で改めてドストエフスキーを
読み直して彼はやっぱり天才だ、という感情。
 カラマゾフを読み直したい、という感情。
 バイロイトに行って、『指環』を聴きたい、
という感情。
 現代から逃げ出したい、という感情。
 現代とがっぷり四つに組みたい、という感情。
 クオリア・マニフェストに殉じたい、という感情。
 あれもこれもやりたい、という感情。
 
 おだやかな春の日差しの下、桜のつぼみが
次第にふくらんでいくのをゆったりと眺めて
笑っていたい、という感情。

 いろいろな感情に、私という小さな存在は
もう押しつぶされてしまいそうです。
 だからこそ、いっそうロジックを磨きたいと
思います。
 桜の下でお会いしましょう。みなさん、
それでは、ごきげんよう。

3月 26, 2005 at 10:39 午前 |

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