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2005/03/08

仕事で身体を鍛える

新潮社の足立真穂さんから送って
いただいた
 甲野善紀、田中聡の『身体から革命を起こす』
が大変面白かった。

 「ナンバ」走法の話などももちろん面白かった
のだが、もっとも「うん、そうだ!」と頷いたのは、
次の箇所だった。

 昔から行われていた仕事感覚でやったほうが、
ずっと本質的な身体づくりができると思います。
 初代の横綱若乃花が、石炭を天秤で担いで、
揺れる板の上をバランスをとりながら運んでいた
とか、あるいは西鉄で年間七十試合ぐらい投げて
四十何勝三十何敗した稲尾投手なんか(中略)
あの人は、子供の頃、櫓を漕いだりして、仕事で
身体を作っていたそうです。最近、そういう仕事で
作った身体とそうでない身体の違いがはっきり出た
のは大相撲の横綱朝青龍ですね。モンゴルで育って、
子供の頃から重い石を運んだり、家の手伝いで仕事を
している。六歳くらいで二十キロぐらいの石と
格闘していたという話を読んだことがあります。
 (中略)そうやって作った身体だから、多機能
でしょう。持ちやすいバーベルとかじゃないんです
から。ウェイト・トレーニングで作った身体とは、
全然ちがうんですよ。(上掲書 p.39)

 これだよ、これ! と私は思ってしまった。
 仕事の性質上、どうしても机に向かうことが
多いが、子供の頃から身体を動かすのは大好き
である。
 しかし、その方法論として、世間に流布
しているものは何だかヘンだ、と前から思っていた。

 大学院生の時、長島重広というのがウェイト・
トレーニングに凝っていて、全身には筋肉が
いくつある、それを一つ一つ鍛えるのだ、
と聴いて、「ひょえー」とは思ったが、何だか
ヘンだな、と思った。
 「今はこの筋肉を鍛えているのだ」
といいながら、椅子に腰掛け、腕をある角度
にしてバーベルを上下しているのを見ると、
とっても妙な気がした。

 会員になってずーっと行っていないスポーツ
クラブがあるのだが、そこでマシーンを使った
時に、これはすげーツマラナイ、と思った。
 まるで、籠の中で車輪をぐるぐる回している
ハムスターじゃん、と思った。

 以前から、身体を鍛えるんだったら、
例えば、森に入って木こりをやるのが
本筋なんじゃないか、と思っていた。
 その理論付けというか、なぜそうなのかを、
甲野さんと田中さんの本を読んでメタ認知
できたように思う。

 身体には筋肉が600以上あるという。
それをどうコーディネートして動かすかは、
つまりはきわめつけの複雑系の問題である。
 タイミングの問題があり、調整の問題が
ある。
 さらに言えばそれは知性の問題なのであって、
甲野さんの言うように、持ちにくいものを
いかに持つか、重いものをいかに軽く持つか
という方法論を捨象してしまっては、本末
転倒である。
 身体のモノカルチャーになってしまう。

 つまりは、身体の使い方においても、
「知性」一般と同じような複雑さと
柔軟さが必要だということで、考えてみれば
当たり前のことなのだが、
 一部の「科学的トレーニング」は、
そこのところをあまりにも単純にとらえて、
身体を蒙昧なる「機械」にしてしまって
いたのではないか。
 マシンルームで単純動作を繰り返すよりも、
状況が刻々と変わるリアルワールドで
 櫓を漕いだり、石を運んだりする方が、
よほど脳ー身体複合体には良質の
栄養になるに違いない。

 身体を動かすことが、むずかしい問題を
考えていることと同じ「知性」を鍛える
ことの延長であって、単なるエネルギー
と力の問題ではないと思った瞬間、
 身体を動かすことがとても楽しく思えてくる。

 それで、昨日はさっそくいろいろ身体を動かして
みた。 
 影響を受けやすいのである。

 階段を2段抜かししながら、「ナンバ」も
やってみた。
 なるほど、まだまだ気が付いていない
身体の運動の可能性が沢山隠れていることが
納得される。

 春になったら、いろいろ力仕事をしたくなって
きた。

3月 8, 2005 at 07:40 午前 |

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» けさ江さんのこと。 トラックバック あいしてそうめん 謹製日誌
茂木健一郎さんの「やわらか脳」(クオリア日記が再編されてます)で「仕事で身体を鍛える」ということが書かれていて、茂木さんは甲野善紀さんの本を読んだことをきっかけにこの項を書かれているんですが、そのおかげでわたしは、齋藤けさ江さんのことを思い出しました。 仕事で鍛えられた身体から生み出される「書画」は、 素朴で味わい深く、ほっとするような人柄がしみ出して いるように思います。 けさ江さんの書画 加藤恵子さんの日記にもふれられてますが、もとは息子さんへ、暮らしのなかの連絡事項を... [続きを読む]

受信: 2007/01/13 14:53:51

コメント

ハンマー投げの室伏広治選手も、丸太を運んで鍛えていると聞きました。室伏選手は背骨のひとつひとつを自分の意思で動かせるという異常なまでの身体感覚を持っているそうです。

私も合気道を稽古していますが、身体感覚を磨くことはとてもエキサイティングで、少し前に茂木先生が言われた「職人的なプロセス」のようです。新しい身体感覚にあっと気が付いた時は、僭越ながら私も「世界は誰のものでも構わない」と思ってしまいますし。

投稿: sakaguzi | 2005/03/09 1:19:45

さ。
合気道やりましょう。
ご一緒に。ぜひ。
僕は今打ち身と擦過傷と筋肉痛でガタガタです。
ほんでも明日も新宿スポーツセンタでこてんぱんにヤラレるのだ。

達人の技は、ほんとにオカルトにしか思えませんよ。
「気」とか大嫌いですが、そういうものを経験するのはとてもおもしろいですよぅ。

投稿: nomad | 2005/03/09 0:53:14

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