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2005/02/25

「あぶら」であり、「あぶら」でない

 私は芸大のやつらが好きだ。何故かと
いうと、彼らがとてもタイヘンな方法論的困難
を引き受けて、作品をつくろうとしている
からだ。

 現代美術ほど、「なんでもあり」のところで
表現を試みているジャンルを私は知らない。
 文学に比べても、
 音楽に比べても、
 科学に比べても、
 現代美術では、「方法論的な解放」の自由と
絶望が実際に制作者と鑑賞者に押し寄せてきている。
 その中で作品をつくっていくことがラクな
はずがない。
 しかし、だから生きている甲斐があるという
ものだろう。

 私の「美術解剖学」の授業に出入りしている
「解剖組」のうちは芸大でも一番入試倍率が
高い油絵科(仲間うちでは、「あぶら」という)
の学生である。
 彼らの多くが卒業で、卒業制作の
発表の季節である。
 大学院に進むやつが多いとはいえ、
一つの区切りである。
 だから、東京都美術館に見に行った。

 本人と作品の写真を並べて撮った。


名取祐一郎 と 『切り絵アニメーション』


大出翔子 と 『母と結婚』


荻野友奈 と 『自画像』


蓮沼昌宏 と 『四コマと鳩のフィールドワーク』

 芸大の「あぶら」の学生は、「あぶら」を描かない。
荻野さんの自画像は一般の人が思い浮かべる自画像に
近いが、その卒業制作は、プロジェクションと
羽田空港の映像を組み合わせた、いいカンジの
作品だった。
 「あぶら」が「あぶら」の厳しい修業をしながら、
しかし最後の制作では「あぶら」を描かない。
 ここに何かぐっと来るものを感じて
しまうのである。

 今日の午後4時からは、杉原信幸が
パフォーマンスをやるというので、
皆さんぜひ東京都美術館(「とびかん」)
にいらしてください。

杉原信幸
パフォーマンス「体内記憶」

行為の足下
断崖の足どりで
肉体に流れる景色

東京芸術大学卒業制作展にて

2005年2月25日(金)16:00から
東京都美術館 展示作品前


前回のパフォーマンスでの杉原信幸

 卒制展を見終わって、芸大にほど近い、
 安藤忠雄がクラッシックな建物に
ガラスのコラムを突き刺した
国際子ども図書館のカフェで、布施英利さんと
お話する。
 来年度のことや、学生たちのこと。
 布施さんの人間観察の鋭さと的確さには、
いつも驚かされる。

 新刊の『はじまりはダ・ヴィンチから』
を頂いた。

 全てが終わり、みんなで根津の「車屋」で飲んで
いたら、バイト上がりの植田工がやってきた。
 椹木野衣さんが卒制展の作品を見に来てくれた、
と喜んでいる。

 植田を誘って、ちょっと外に出たら、
 世界はみぞれになっていた。

2月 25, 2005 at 07:48 午前 |

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コメント

今時、高卒はつらいよー大学はいきたいよー

投稿: たけちゃん | 2005/03/02 22:33:15

学校も仮名です。クラスの憧れの子でした。学校は公立だけど、ある大学を目指しています。まだ、親にもいってません。大学なんてとんでもない・・といわれそうだよー

たけちゃんより

投稿: 仮名柿沼博子 | 2005/03/02 22:27:45

こんにちは。私は今年大宮光陵高校美術科に合格しました。これからがんばって芸大を目指します。どうすれば入れますか?教えてください

自画像は写真のように上手で驚きました。

投稿: 柿沼博子 | 2005/03/02 21:33:13

そうなんですよ、まえから思っていたんですが
現代アートの人々って全部引き受けようとしている。凄いですよ、責任感が。そこへ行くと音楽は安穏としているというか。
なんか変な方法論があるんですよね、個々に。そしてそれがその人にとって当たり前であること。で、それを壊しながら出てくる、ほとばしりにジーンとなるわけです。瞬時に全てが理解可能な作品クオリア、時間性に縛られた音楽よりもむき出しなので強烈ですね。
そこが奇をてらっただけの商業性と芸術性の決定的な違いだと思います。
現代アート、大好きです。その存在。

投稿: 西山 | 2005/02/25 19:57:52

「あぶら」の学生さんたちが話しているのを、
隣の席で聞いてみたい。飲み会の日がわかれば、
車屋でこっそり飲んでいよう。
「あぶら」が「あぶら」を描かないというのがすてきだ。
彼らがどのような分野へ就職するにせよ、
その魂があればかならず輝くでしょう。

投稿: かぶとぼとけ | 2005/02/25 11:09:08

わが息子は、早大政経の政治学科4年在学で、愈々就職だが行き先は決まっていない。娘は、大阪芸大のスペースデザイン?で、こちらの方が確りしている。就職の考え方等について。将来の自分の方向性である。
 この芸大では、文芸誌を発刊し、編集をあの小川国夫氏がされているのにはびっくりしました。その他、劇編等々の雑誌を出版しています。様々なエンタティナーの方を講師に導きいれて、学生の将来の案内役になってくれています。
 娘に言わせれば、活気ある大学だとのこと。世良、筧、モブ・・・、いろんなジャンルで活躍しているOBが居られて誇りに思っているようだ。兄の東京に負けない関西魂が沸々とあるように思えます。

投稿: 水無月 | 2005/02/25 9:13:49

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