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2005/01/23

リンゴの香りを楽しむこと

とっぷりと日が暮れた頃、
まだ開いているかな、と思いながら近所の
八百屋さんに走った。
 最近は、二つある八百屋さんでの
 会話を楽しみにしている。
 スーパーでは野菜は買わなくなった。

 黄色いリンゴと、赤いリンゴがあったので
迷った。
 黙って買ってしまえばそれだけだが、
何か一言言えば、おしゃべりなおじさんのこと、
 会話になるとわかっている。
 
 「どういう違いがあるんですかね」というと、
案の定始まった。
 「こっちはね、少し香りがあって、柔らかい。
こっちのやつは、堅めかな。」
 堅めの赤い方を選んだ。

 おじさんはそれだけでは終わらない。
 「お年寄りなんかはね。この黄色いのを買って
いくの。部屋の中において香りを楽しむんだよね。
歯にもやさしいでしょ。」
 リンゴの香りを楽しむというのは初めて知った。

 「このキュウリはね、関東のやつだから。新鮮で
おいしいですよ。広島とか熊本から来たので、
きのうとれましたというのは、ウソだからね。
選果して、仕分けして、配送したら、1日で届く
はずがないからね。どうしても鮮度が落ちて
しまいますよ」

 それぞれが専門性の中でベストを尽くし、
お互いにそれをリスペクトし合うのが
よい社会だろう。 
 八百屋なんて、野菜や果物を持ってきて
売っているだけだろう、と思うようなやつらが
社会にのさばって欲しくない。
 ITが未成熟な今、
そんな乱暴がのさばってはいないか。

 他者というのは、絶対に消費され尽くせない。
 その核に、原理的に不可視な部分を持っている
からだ。
 お互いに見えない部分を尊重し合うことは、
専門性をリスペクトし合うことに似ている。
 無趣味のおじいさんだと思っていたら、
案外リンゴの香りを楽しんでいるかもしれない
じゃないか。

1月 23, 2005 at 08:19 午前 |

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