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2004/12/30

奇妙であることの自由

仕事をしていて、現実逃避したくなると、
イギリスのコメディを見る。
 一本約30分なので、気分転換にちょうど
いいのである。

 最近見ているのはFather Tedだが、
改めて、イギリスのコメディにおける
「奇妙であることの自由」のことを考えさせられる。

 Fatherというのは、カトリックの神父の
尊称で、登場人物たちはみんなその「神父」
であるはずなのだが、みんな奇妙この上ない。

 特に凄いのはJackで、いつも安楽椅子に
腰掛けていて、酒が大好きで、
 話す言葉が、
 Drink! Arse! Feck! Girls!の4種類
だけである。
 上の言葉を叫びながら酒瓶を追いかける、
というのがFather TedにおけるJackの主な
役回りだ。

 イギリスは近代科学の発祥の地である。
奇妙な人が、その奇妙さを集団の中で萎縮させる
ことなく、ますますそれぞれの奇妙さの
世界の中に傾斜していける、
というのが科学的創造性を育んだ一つの条件
だったのではないか。
 私は、そんな仮説を持っている。

 むろん、イギリスにもpeer pressure (仲間
からの同質化圧力)はあるし、学校での
イジメもある。
 だから、コメディの中の「奇妙であることの
自由」は一つの理想像なのかもしれないけども、
 実際、奇妙さであることの自由と、成熟が
同時進行していく、ということは間違いなく
ありそうだ。

 思い出してみるとケンブリッジの学者の中には、
ずいぶん奇妙な人たちがいたように思う。
 少し、奇妙さの種があった時に、
それが同質化圧力でそぎ落とされてしまうのでは
なく、
 周囲の人から放って置かれる、あるいは
認めてもらえる、という環境があった時に、
奇妙さの傾向が強めっていく。
 そんなダイナミックスがあったように
思う。

 日本の文部科学省も、ITの発展ですっかり
価値の下がったホワイトカラー育成のために
チューニングされていたかつての画一化教育
から、
 たとえばgoogleを創業するような、キック
のあるユニークな人材を育成する教育をしたい、
と本音では思っているはずだ。
 そうじゃないと、これからの日本は立ち行かない
からね。

 だとすれば、なおさら、
 「奇妙であることの自由」を、基本的人権の
一つとしてここ日本でも高らかに主張したい。
 いいじゃん、他人と違っていたって。
 Jackみたいに、4種類の言葉しか喋れなく
ったって、ちゃんと人気コメディの脇役張れる
んだから。

 ここまでの話と直接関係するのではないが、
日本のインターネットの掲示板とかの
「なれ合い」の雰囲気が私はイヤだ。
 「考える人」の中の中島義道の連載
「醜い日本の私」の中の言葉を借りれば、
「虫唾が走るほど、反吐がでるほど、鳥肌が
立つほど」きらいだ。
(ここまで極端じゃないけど)

 誰かが何か書き込む。
 「そうですよね〜」
 「そういうの、あるある」
 「同感です」
などというスレッドが延々と続く。
 そういうのを見ると、なんだかとても
気持ち悪くなってしまう。
 甘ったるいシュークリームを5個一気食い
した時のような気分になってしまうのだ。

 そんな時に、一人、何だか奇妙な雰囲気を
漂わせている書き込みを見たりすると、ほっと
する。
 シュークリームの後で、柴漬けを食べた
時のようにほっとする。

 今話題の『電車男』の文法
(誰かが書き込みをして、それに共感して、
あれこれと応援する)もキモチ悪い。
 ネット上の共感の押しつけ、なれあいの
押しつけはイヤだ。
 シュークリームばかりじゃなくて、
たまにはカレーパンも食べたいのだ。

 こんな風に、
 メタファーとして食べ物のことを書いて
いたら、本当にお腹が
空いて来たので、朝ご飯にすることにする。

 シュークリームも食べたくなって来た。

12月 30, 2004 at 07:57 午前 |

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受信: 2004/12/30 22:10:09

コメント

おはようございます。

何度か不躾なメールをお送りしたにも関わらず
お返事まで頂き甚く感謝しております。
茂木様の言動や存在自体が、
私の心の糧になった一年でした。
来年も益々のご健勝とご多幸を心より
お祈り申し上げます。

投稿: | 2004/12/31 6:41:17

わざわいの多い今年、かの地に自分が生まれたかもしれないことをおぼえて、新年を迎えたいと思います。
どうぞ佳いお年をお迎えください。
くれぐれも、御身お大切になさってくださいませ。
ますますのご活躍をお祈り申し上げます。

投稿: | 2004/12/31 0:03:27

(大きなお世話の、ご参考まで:-)
シュークリーム、新潟にお越しの際は
是非、「大坂屋」のシュークリームを
お試しください。:-)

投稿: | 2004/12/30 9:59:07

おはようございます。毎日日記楽しく拝読させていただいております。

それぞれがユニークでそれを認め合う社会というのは確かに理想で僕自身もそうであればどんなに生き易いだろうかと思います。しかしそのそれぞれがユニークであることを認め合うこともまた一つの共感で、僕は人々がなんらかの共感をもって<笑う瞬間>というのは素晴らしいことだと思います。その為のプロセスとして議論や掛け合いがあることは必要なんだと思いますが、でも最後は笑いあいたいですよね。

そういう共感ある場として僕は「電車男」に好印象を持っています。あれは馴れ合いというより平素<後ろから撃たれ続けた男たち>が一人の男の恋の悩みにあうでもないこうでもないとアドバイスし試行錯誤していくことによってその恋が成就し、そしてみんなの祝福を受けるという、議論と共感に溢れた場だったと読みました。もしかして2ちゃんも捨てたものじゃないのかなとも感じました。

年末に向け寒さも増してまいりました。お仕事もお忙しいようですが、お体に気を付けてよいお年をお迎え下さい。

投稿: | 2004/12/30 9:16:55

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