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2004/12/02

チンパンジーがもたらした認知的変容

京都大学霊長類研究所二日目。

 思考言語分野の友永雅己さんのご好意で、
授業をする前にチンパンジーの「クロ」(メス)
とその子供の実験を見学させていただいた。

 思考言語分野は、チンパンジーのアイちゃん
の研究で著名な松沢哲郎さんが教授を
され、友永さんは助教授である。

 松沢さんにもご挨拶した。

 進行中の実験内容については、もちろん
ここには書けないけれど、
 いろいろ「メタ・レベル」でおもしろい
ことがあった。

 一つは、チンパンジーの実験は、さまざまな
細かいノウハウの蓄積なのだな、という
ことである。
 脳科学の研究でしばしば使われるマカク猿よりも
知能が高いチンパンジーだが、
 だからこそ実験がかえってやりにくくなる、
ということがある。
 つまりは、そう簡単には言うことを
聞いてはくれないのだ。

 ケージに母と子供が入った時にまっさきに
子供が食べるための果物を置いておくとか、
子供が食べている間に母親に別に果物を
あげるとか、
 母親はスノコの上に座って実験を
するのが好きだとか、
ご褒美の食べ物は、リンゴ、リンゴ、リンゴ、
リンゴ、干しぶどう、とインターバル
であげるとか、
 本当に細かいノウハウが詰まっていた。

 いろいろ考えたけれど、一つ不思議な
ことは、
 なぜ正答率がチャンス・レベルよりも
高く、完全な正答よりは低い、という状態が
チンパンジーの中では続くのか、ということである。
 その時、チンパンジーの脳の中では
何が起きているんだろう。
 シンボリックな思考をする成人の人間の場合は、
チャンス・レベルか、それとも「わかった!」
と100%に近くなるか、いずれかだと
思うのだが。

 いろいろと、考えるきっかけをいただいた。
 友永さん、ありがとうございました。
 
 授業を終わり、正高信男さんに明治村
に連れて行っていただく。
 夏目漱石の旧居が見たかったのである。
 
 『吾輩は猫である』を執筆した二年間
住んでいた家。森鴎外も時期を異にして
住んだが、そっちの方は全く関心がない。

 漱石旧居の縁側には日が差していた


 大変興味深く見たが、
 漱石その人の気配を感じたか、といえば、
そういうことではない。
 先日のワーグナー協会の例会で、バイロイト
に行ってもワーグナーその人の気配はなかった、
という話をしたが、
 明治村も同じことである。
 生の文脈は、その場限りで消える。

 なるほど、こういう間取りだったかとか、
ここが書斎だったかとか、
 もっと知的な回路を通して生まれる感銘が
ある。
 それはそれで悪くない。

 数年前に無理をして手に入れた、
漱石がはがきに描いた絵

http://www.qualia-manifesto.com/soseki.html

は「猫」執筆時とは重ならないようだが、
こちらからは、漱石の生命のゆらめきが伝わって
くる。

 このところスケジュールがタイトで
睡眠不足が続いていたので、
 帰りの新幹線は熟睡。
 
 東京駅で、行き交う人を見ると、なるほど、
皆サルの一種に見える。
 チンパンジーをたくさん見たかららしい。
 フィールドをやると、もっと、人間が
サルの一種だという感覚が強くなるのだろう。
 正高さんが『ケータイを持ったサル』を書いた
感覚が少し判ったような気がした。

12月 2, 2004 at 07:46 午前 |

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