精神年齢逆行現象
最近、「乳児の世界」が
翻訳されたPhilippe Rochatが研究所に遊びにきて、
talkしてくれた。
池上高志も、フィリップの話を聞きにきた。
フィリップの話は、相変わらずおもしろかった。
エモリー大学の人だけれども、今はサバティカル
でパリにいて、自己と他者の関係について本を
書いている。
来年の9月までは、本を書くことに専念する
とのこと。
フィリップの実験で、幼児が気がつかないうち
に、前髪にステッカーを貼る、というものが
ある。
鏡をぱっと見せられて、自分の奇妙な姿に
気がついた幼児は、「ああっ!」という表情を
見せて、急いでステッカーを外す。
これが第一の実験の結果。
次の実験では、実験室に来たときから、
実験スタッフも、連れ添ってきた母親も、
みんな前髪にステッカーを貼っている。
この状態で、鏡をぱっと見せられて、
自分も前髪にステッカーを貼っていると
気がついた幼児は、うれしそうな
顔をして、ステッカーを外そうとしない。
これが第二の実験の結果。
一つ目の国にいけば、みな一つ目になりたがる
のだろう。
ピア・プレッシャーがいかに人間をつくるか、
という話。
フィリップ、池上高志、それに研究室の
学生たちと五反田の「遠野物語」で飲む。
久々に、心から楽しいと思える時間だった。
何が楽しいかって、童心にかえって、たわいもない
ことを言い合うこと以上の歓びはない。
フィリップもすっかりはめを外していろいろ
なことを言っていた。
むろん、貴重なエデュケーションの場でもある。
須藤はちゃんと自分の幼児の言語発達の研究を
説明していたし、
柳川は心の理論についての議論を吹っかけて
いたし、
恩蔵はフィリップの研究と自分の関心領域の
関係性について話していたし、
小俣は何やらごにょごにょ言っていたし、
みなそれぞれフィリップと有意義な時間を
過ごしても
いたけれども、
私は池上とフィリップと一緒に、
ブッシュ批判から日本人の集団気質までわいわい
いろんなことを言ったのが、すげー楽しかった。
フィリップが日本人の集団気質と言ったのは、
要するに例の日本人には個人的独創性の風土が
欠けている、という筋の話だけども、
一昔前は「そんなことはねえよ」と反発
していた私も、最近は「まあ、そりゃあそうだな」
とあまり反発しない。
だって、本当にそうなんだもの。
一人立つ、という日本人が少なすぎるよ。
ごちゃごちゃと腹芸ばかりやるやつが
うろうろしてやがって。
なれ合いの言葉を交わし合うのが
コミュニケーションだと思ってやがる。
端から見ていて、気持ち悪いこと甚だしい。
まあ、この国の文化風土がどうであろうと、
オレや池上は勝手にやるから、放っといてくれ。
と、久しぶりに毒を吐くことからも判るように、
一気に精神年齢が大学生レベルに戻ったような
気がする。ありがたいのは真の友。洋の東西は
問わない。
フリーなジャズセッションの燃焼の後の
爽快感を身体に感じながら、フィリップを
タクシーに押し込めてバイバイした。
4日には大阪で1000人の母親を
前に話すとか言っていたフィリップ。
googleで調べてみたら、産經新聞と赤ちゃん
学会共催のイベントらしい。
11月 3, 2004 at 08:41 午前 | Permalink
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