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2004/11/01

文学に対する信頼

 ここのところ、文学というものが迂遠で
欺瞞に満ちた営みであるようにも思え、
 やや信頼を失いかけていたのだけれども、
 九州への行き帰りの飛行機の中で夏目漱石の
『趣味の遺伝』や『琴のそら音』を読んで、
 やっぱり文学というのはいいものだなあと
思った。

 どうも、現代の作品ばかり読んで、気が
滅入っていたらしい。

 家に帰ってうれしかったのは、BBCで
2001年から放送された
傑作コメディ、
The Officeクリスマス・
スペシャル

が届いていたことだった。

 The Officeのシリーズ1、シリーズ2、
と合わせて、リージョン2用のDVDを
イギリスのアマゾンのサイト
で買うことができるから、
だまされたと思って買って欲しい。
 そりゃあ、多少の英語力は必要だが、
もし感じることができ、知ることができる
人であれば、そうか、コメディというのは悲劇
と一体になった深い世界認識なのだな、
という存在の根底に達するような感動が
得られるはずだ。

 The Officeは、アマゾンのレビューを見ても
判るように、すでに現代の古典としての地位を
確立している。
 いいものが出たら、人はちゃんとそれを
評価できるんだなあと思う。
 その信頼がなければ、クリエーターは
やっていられない。
 
 TVのコメディというものが達し得る高みを、
日本人はきっと残念ながら知らない。
 日本にも広沢虎造の「清水次郎長伝」
のような掛け値なしの(悲劇=コメディ)の
傑作があるし、
 若手コメディアンの中には才能も意欲も
ある人がいると思うが、
 TVコメディをシリアスにとらえる
文化的伝統というものがない。

 もうすぐ発売の『文學界』12月号の
「脳のなかの文学」の連載で、The Officeを
中心にコメディについて書いたので、
もし興味を持ってくださった方は読んで
いただけたらと思う。

 The Officeは、漱石、ジョイスに通じる
最良の文学的伝統の水脈に属している。

 私は、良いものへの愛に殉じていれば
いいんだ、と最近は思う。

 
イギリスのコメディ(未完)

11月 1, 2004 at 05:40 午前 |

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