« Lecture Records (Special) | トップページ | 成熟した大人から、お子様の役人たちへのメッセージ »

2004/10/29

自己というインフラ

芸大に週一回授業に来ることがなかったら、
上野近辺に来ることはもっと少なかったろう。

 芸大の授業があるのは実質的には半年
だけど、
 その間、自分の青春が埋まっているエリアに
定期的に来れるのはうれしい。
 なにしろ、学部4年(理学部2年、法学部2年)、
大学院5年、計9年間本郷にいたから、
 鬱屈をかかえて歩き回っていた不忍池
から広小路にかけてのエリアには、いろいろな
思い出が詰まっている。
 まさに空間は記憶を収納するメタファーに
なっている。

 あの頃、芸大のキャンパスの前は何度も
通ったけれど、不思議に中に入ろうとは思わなかった。
 自分の人生とはクロスしないと思って
いたのだろう。
 布施英利さんのお誘いがなかったら、
まだクロスしていなかったかもしれない。
 
 池上高志の授業の詳細はmp3で聞いていただく
こととして、
 私には、ownershipとagencyの揺らぎが
知覚に本質的な問題であるという池上の
問題提起がとても面白かった。

 免疫系とのメタファーもとても良くわかる。
 システムがあるからこそ発生するprecision。
 池上の言うprecisionの問題は、まさに
私にとってのクオリアの問題につながっている。

 つまりは、順序づけも位相も明示的には導入
できないのに、あきらかに「これ」と指し示しが
できるような構造が、intentionalityとして普遍的
に立ち上がる何らかのシステムが、私たち
というもので、
 その境界が揺らぐということが本質的である
というのもまた事実である。

 visual awarenessを典型的な領域とする
クオリアの生成問題においては、しかし、
池上の言うownershipやagencyの揺らぎと
して明示的にとらえられるsetはむしろ一部分
である。
 クオリアは、いわば池上の言う揺らぎとは
一見無関係に見えるような安定領域こそを
本領とするのであって、
 そのことを私は考えざるを得ない。

 池上の授業が始まる前に、伊東乾さんと
2時間ほど喋る。
 初対面だけど、なんとなく共感できる部分が
多かった。
 特にリベラルなヒューマニズムを背景した
創造性への決意の部分において。

 授業終了後の上野公園の飲み会は、油絵のP植田が
事前に買い出しをしてくれていて、
 スムーズに始まる。
 布施さんも登場。
 なんだか20人以上にふくれあがったんじゃないか。

 本当に楽しい時間であるが、授業は年内だから、
休講しなくてはならない日をのぞくと、あと
何回か。

 皆は、あのあと、根津の車屋に流れたらしい。
 私は金曜までの仕事がいろいろあって、
早帰りして、こうして朝早くから職人に
なっている。

 上野公園でみんなで飲む時に見上げる月も
好きだが、
 職人モードで内にこもる感覚も好きだ。

 今日は夕方九州へ。

10月 29, 2004 at 05:38 午前 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 自己というインフラ:

» 美術解剖学 041028 トラックバック もぎけんPodcast
東京芸術大学『美術解剖学』講義  後期第3回 特別講義  ゲスト 池上高志(東京... [続きを読む]

受信: 2009/07/21 3:27:40

コメント

 茂木先生。度重なるコメント失礼します。

 最近読む本はもっぱら意識・心にかんする
題材です。
 それもあってか、現実とはなんだろうか。
とよく考えます。目にみえるものに、個人そ
れぞれのメタファーなり、クオリアがともな
うと、脳内で「目にみえるもの」とはまたち
がった世界を生み出しているんだなぁ。と。

 マトリックスは現実と仮想を行き来できる
映画でした。脳内と現実をつねに私たちも行
き来して、またあらたなメタファーが構築さ
れていくのだと考えます。

 そうしたときに、「目にみえるもの」とは
なんだろうか。と深い思索におちいってしま
うのですが、きっかけなのかなぁ。とだけに
とどまってしまいます。

 茂木先生はどのようにお考えですか。

またこのような疑問を持った方々のご意見も
賜りたい近頃です。

投稿: ストン | 2004/10/30 11:44:10

とっても気持ちはお伺いしたかったのですが、体調の悪さを後押しするだけの気力が伴いませんでした。私にとっては芸大や上野という場そのものが遠心力が働く場所で、それに対抗するだけの気力は昨日は持てなかったですが、音声だけだとわかりにくいのでやはり這ってでもいくべきだったなぁと思いました。

投稿: Yuri | 2004/10/29 15:51:07

>まさに空間は記憶を収納するメタファーに
>なっている。

 思い出がいっぱいなんですよね。
そのような空間がこれからもたくさん
経験できれば、仕合わせかなぁ。


p.s 北九州で公演なさるのですね。
  つい先日まで旅行で、小倉まで
  いっていたのに。  残念です。 

投稿: ストン | 2004/10/29 8:36:42

コメントを書く