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2004/09/30

アマゾンへの手紙

氏名: 茂木健一郎
Eメールアドレス: ******
件名: その他の質問
注文番号: 「脳と仮想」のブックレビュー(著者より)
メッセージ: 先日、拙著「脳と仮想」
(新潮社)に 対して、 「れ」という
一文字のブックレビュー が掲載されて
いることについて、 抗議いたしまし
た。 さっそく、カスタマーサービスの
**さんから以下のような回答を い
ただきました。ありがとうございました。
当該レビューは削除されました
が、 今日に至っても、「評価」 の星一つ、
というのは削除されて いませ
ん。 アマゾンのような会社にとって、
HP上の表示は、カスタマーエクス
ペリエンスを決定付ける、顔のような
ものではないでしょうか? 早急に
訂正をお願いいたします。 アマゾンの
読者レビューの運営に ついては、
周囲でも大変不満が 高まっております。
私はアマゾンのヘビーユーザー
(購入)ですが、貴社の企業 イメージは
このようないい加減な 対応に
よってかなり損害を受けている ことをど
うかご認識くださいますよう。

茂木健一郎拝

9月 30, 2004 at 08:07 午前 | | コメント (0) | トラックバック (0)

Public Lecture

本日

京都精華大学アセンブリーアワー講演会

茂木健一郎 『脳から見た美とはなにか』

2004年9月30日(木)14:40〜16:10
京都精華大学 黎明館L101教室

http://www.kyoto-seika.ac.jp/assembly/2004/0930.html

9月 30, 2004 at 06:49 午前 | | コメント (1) | トラックバック (0)

存在の淡い気配

竜安寺の石庭には、枯れた、という
イメージに反して、実に様々な色彩があふれている。

 石を取り囲む苔だけが生きているのでは
ない。
 一つ一つの石が、実は呼吸しており、
脈動しているのだ。

 名古屋で目が覚めて、それから
京都まで、小林秀雄の「現代思想について」
を聞きながら車窓を眺めていたら、
なんとも妙な気分になった。

 我々は、
 存在ということを、空間のメタファーを
通してとらえすぎだ。
 
 ベルグソン、そして小林はそのように
考える。

 現実は、脳内現象からの構築物だ、
という視点から、物理主義を外して
世界を見れば、
 ずいぶん違った風景が現れてくるのでは
ないか。  

 おばあさんの魂だけじゃない。美とか、
情念とか、そういうものだって、本当は
存在するんじゃないか。
空間じゃない、別のところに。

 石庭の右の端に動く緑のものがあった。
カマキリだった。

 カマキリは、無明の地を巡礼するかのように、
ゆっくりと砂利の上を進み、
 やがて水を張った縁に達して見えなくなった。
 
 石を選んで、ならべる。そのような意味では、
この名園もまた文脈主義ではある。

 文脈主義が、単なる項と項の間の関係に
とどまらず、一つの実体として存在
し始める時、
 そこに何者かの気配が立ち現れはじめる。

 そう思えば、芸術も科学も、
その中で愛すべき良品たちは、すべて
形而上学的存在基盤において同じではないか。

 マツタケの焼いたのをエイヤッと
食べた。

 食味をも、統一的形而上学において
とらえること。

 竜安寺に行くと、どうも変性意識状態に
なるらしい。

9月 30, 2004 at 06:39 午前 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2004/09/29

男心の湯島岩手屋

アマゾンの担当者から「削除した」
と過去形で書かれたメールが来てから、
実際に「れ」が消えるまで数時間かかった。

 しかも、まだ「一つ星」は残っている。

 できの悪い人工知能を相手にしているようで、本気で
怒る気にもならない。
 もっとも、ネット上で毒をはいている姿の見えない
MOBたちは、もともと不出来の人工知能のようでもある。

 湯島の「岩手屋」で、『脳の中の小さな神々』を
企画、編集してくださった五十嵐茂さん、
有田芳生さんと飲む。

「岩手屋」にて有田芳生さん、五十嵐茂さん


有田さんのサイトは、
http://www.web-arita.com/
イラストをクリックすると、日記が出ます。

 有田芳生さんを最初に見たのは、もちろんテレビ
の中だが、私が以前住んでいた街に有田さんも
いらしたので、時々実物も見かけていた。
 池袋の「西むら」という店で、カウンターに
座っているのをお見かけしたこともある。

 しかし、ちゃんとお話したのは初めてだった。

 昔、ファミコンの麻雀ゲームのキャラクターに
似た顔の男があり、勝手に「有田さん、早く
打ってください」とか、「有田さん、それロン!
です」
などと頭の中でコメントしていたことがある。
 随分前のような気がするが、オウム騒動は
1997年だ。
 もちろん、麻雀ゲームのことを有田さんに言ったり
はしない。

 有田さんも五十嵐さんも、私よりも少し早く
人生という軌道を疾走していたわけで、見える風景
が少し違うようである。

 「マッハ主義」一つとっても、それが親の
敵でござる、と言われていた時代の精神を
私は知らない。
 だからこそ、御両名とお話させていただくと、この
若造も勉強になる。
 若造、オヤジは文脈で決まることだ。

 インテリが堕落したのが現代だが、
有田、五十嵐両名は健在である。
 マーケットという暴力の中で、御両人に、ぜひとも
知の暴れん坊将軍であり続けてほしいと願う。

 ワイドショーは、トークのところよりも
ビデオの方が分刻みの視聴率が高いのが通例だが、
有田さん出演の「ザ・ワイド」は逆の傾向がある由。

 有田さんは、今、テレサ・テンの生涯についての
本を書かれているとのこと。「歌屋 都はるみ」は
名著である。カラオケではるみ節を歌いこそはしないが、
有田さんの本を読むと、都はるみが希代の歌手である
ことはシミジミとわかる。

 テレサ・テンの本は、文脈をアジア、とりわけ
中国をとりまく国際政治の問題に移して、希代の歌姫
の生涯を描くことになるらしい。
 執筆がうまくいきますように。

 などと、マジメで建設的な話ばかりをしていたわけでは
もちろんなく、五十嵐さんにとっての「髪の毛の
長い女」の法則や、私にとっての「原節子の目は
ダイヤモンドの輝き」、有田さんにとっての、「男
心の未練でしょう」問題など、話題は多岐に渡って
まるで京の五条の橋の上、牛若丸のごときだったが、
全ては岩手屋のうまい酒の中に露と消え、後には
あの中秋の名月の夜は楽しかった、と
いうぬるぬると暖かい感情の記憶
だけが残ったのであった。

9月 29, 2004 at 07:36 午前 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2004/09/28

蕉雨園、島田雅彦対談

 文京区、関口の蕉雨園で、
 永江 朗 さんの立ち会いのもと、島田雅彦さんと対談する。

 蕉雨園は、明治の風情を色濃く残す
和風の邸宅。
 講談社の創業者一家の所有であり、三島の小説に
出てくる華族の世界を思い起こさせる。

 まずは、永江さんに「クオリア」や
「ホムンクルス」についてのインタビューを
受ける。
 永江さんは周知の通り大変エクセレントな
人で、
 ものごとの本質がスイスイと整理されて行く。

 島田さん到着とともに、当然であるかのように
白ワインが出される。
 酒がないと暴れるかも、と危惧していた私は
ほっと一息。

 約30分後、当然のごとく、赤ワインも
追加される。
 
 アイオワ大学に世界中の作家が集まるという会議に
行っていた、という島田さん。
 その話から、話題は当然のごとく快楽の政治学
の問題に移行していく。

 一応私もMP3で録音したが、公開ははばかれる。

 終了後、この後もまたアポがあるという永江さんは
雨の中タクシーで去り、
 島田さんと私、それに大場葉子さん、伊藤さん、
灘家さんの面々は、池袋近くの中華料理屋に向かう。

 ここで、快楽の政治学の問題を、舌の快楽と
からめてさらに議論した。

 帰りのタクシーの中で、モバイルにてアマゾンの
サイトを見る。
 その際見つけた、
 『脳と仮想』について書かれた書評以前の
駄文に激怒して、アマゾンにメールを送りつけたのは
旧クオリア日記サイトにて既報の通りである。

 アマゾンは書評をフィルターしていないわけでは
ない。
 その証拠に、『バトル・ロワイアル』に対して
私が書いた書評は検閲されて掲載されていない。

 ポリシー以前の企業の基本的倫理の問題だ。
 アマゾンを2ちゃんにしていいのか? 
 最近は2ちゃんの方がまともなのではないか。

 とは言っても、このような怒りは浅いものだから、
一晩眠れば治ってしまう。

 くだらないものは、さっとデルタ関数的に怒って、
あとはきれいさっぱり忘れてしまえば良い。

 眼を上げれば、世界は美しいものに満ちており、
心をくだくべき仕事は山積している。 

9月 28, 2004 at 08:09 午前 | | コメント (2) | トラックバック (0)

クオリア日記引っ越し

クオリア日記はこちらに引っ越しました。

 2004年9月27日までの
クオリア日記は、

http://6519.teacup.com/kenmogi/bbs

にあります。
 また、2001年1月1日以降の過去の日記は、

http://www.qualia-manifesto.com/qualiadiary/qualiadiary.html

にあります。

9月 28, 2004 at 07:46 午前 | | コメント (3) | トラックバック (1)