日高敏隆先生
日高敏隆先生の訃報に接し、
深い哀しみの思いに打たれました。
思えば、小学生の時から
蝶の研究をして学生科学展などに
発表していた私が、日高先生の
『蝶はなぜとぶか』に出会って、
動物行動学の面白さに目覚めたのでした。
以来、日高先生の著作をたくさん
読んで、育ちました。
大学院生の時には、日高先生が翻訳された
『鼻行類』に見事に「かつがれ」、医学部図書館に
わざわざ「掲載論文」を探しに行ったりしました。
そのように、たくさんのものを受け取った
日高先生に、図らずもお目にかかり、
いろいろとお話する機会を得たのは、
人生における何よりの僥倖でした。
東京や京都にて、お話をうかがうことを
重ねたのです。
とりわけ、
昨年の夏、日高先生とコスタリカにご一緒に
旅行した経験は、生涯の宝ものと
なりました。
ジャングルのさまざまな生きものを見て、
子どものように目を輝かせていた
日高先生のご様子を、忘れることが
できません。
折に触れ、日高先生から発せられた
鋭くも深い言葉の数は、いつまでも
私の心の中に残っていることでしょう。
日高先生は、生物たちにとっての『環世界』
について論じるなど、深い哲学、世界観を持った
方でした。
日高先生の深い思想を示すエピソードを、
一つ想起したいと思います。
私たちのゼミにいらして下さった日高先生は、
「おばけ」の話をなさいました。
タクシーの運転手さんが、女性を乗せた。
ある場所で、突然いなくなった。
てっきり「おばけ」だと思ったが、
よく調べたら、合理的な説明ができた。
世の中の多くのものが、「おばけ」
のようなものである。
日高先生は、そう、看破されたのです。
そして、日高先生は、今日私たちが絶対的な
ものと思い信じている科学的な真理でさえ、
本当は「おばけ」かもしれないと
おっしゃったのです。
私の魂は、その時、震撼したことを
告白します。
そのような深い洞察に満ちた言葉が
人の口から生み出されることは、
滅多にない。そのように感じました。
ここに、日高先生に教えていただいた数々の
ことに深く感謝するとともに、
そのお人柄の温かさを忍び、
深くご冥福をお祈りいたします。
日高先生、本当にありがとうございました。
そして、お疲れさまでした。
茂木健一郎

コスタリカのジャングルにて、日高敏隆先生と。
(2008年8月14日)
11月 24, 2009 at 08:25 午前 | Permalink | コメント (0) | トラックバック (0)








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