緊張のスパイラル
「茂木健一郎です。」
「住吉美紀です。」
この「演出」が多用されていた放送の初期の頃は、最初にこの決まり事を言うことに多大なプレッシャーがかかっていて、それが終わると、収録が半分済んだような気分になった。
せりふを言い間違えると、撮り直しで住吉美紀さんやスタッフの方に迷惑をかける。それで、控え室にいる時や、廊下を歩きながら、場合によってはトイレの中で復唱した。それでも、ついつい間違えてしまうことがあった。やはり、決まり言葉を言うことがどうしても苦手だったのである。
決まったせりふを間違えずに、しかも自然体で言うためには、いわゆる「フロー状態」になれば良い。
そのことは、理論的にわかっていた。わかってはいても、なかなかそのような状態に自分を持っていくことができなかったのである。
ここに、フロー状態とは、ハンガリー出身でアメリカで活躍した心理学者のチクセントミハイが提唱している概念で、「集中しているが、リラックスしている」状態を指す。私たちは、ついつい緊張していることを、集中している状態と勘違いしてしまいだが、そうではない。限りなく集中していても、リラックスしているということはあり得る。ちょうど、子どもが遊びに熱中して我を忘れている状態が、「フロー状態」である。
人間の脳や身体が最大のパフォーマンスを発揮できるのは、フロー状態にあるとき。アスリートが世界新記録を出すような時には、懸命にやっているというよりは、むしろリラックスして「流している」感覚であることが多いという。これが、まさにフロー状態となる。
決められたせりふを、定められた時間で言う。そのことを意識して、最初はどうしても硬くなってしまっていた。緊張すると、自分でもヘンになって締まっているのが手にとるようにわかる。あっ、これではいけない、と思うと、ますます緊張のスパイラルに入っていってしまうのである。
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コメント
茂木健一郎さま 私が思っているフロー状態は、朝
太陽におはようの挨拶をする時に、朝にだけ存在する張りつめた空気の流れに、心身は緊張感を感じています。でも、いつもと変わらずに、今日も笑顔のお日さまを感じる瞬間には、心身はリラックスしています。この状態は、フロー状態と同じなのでしょうか?..
投稿: 蓮華 | 2010年1月22日 (金) 10時25分
全く関係ない質問で申し訳ございませんが知りたいので回答をいただけたらと思います。
①右脳と左脳では処理してる事項が違うと言われていて人を見たとき特に顔などは左右に分けて印象づけるとテレビ等で聞きました。例えばですがそれが左右に一人ずつ計二人の場合も同じなのでしょうか?
②左右でボケやツッコミが違う芸人のコンビが漫才をやる際に客の印象(脳での感じ方)は変わってくるのでしょうか?
③左右のどちらにボケやツッコミを置くかで面白さは変わってくるのでしょうか?
④脳での感じ方が異なる場合、左にツッコミを置いた場合には論理的なネタかあるいは擬音など感覚的なネタが好まれるなどはあるのでしょうか?
要は客商売は客がいかに感じるかが重要ですので客の脳の捉え方によって芸人が売れるか脳科学の面で法則性があるのか教えて欲しいです。
投稿: 気狂いピエロ | 2010年1月22日 (金) 13時57分
「集中しているが
リラックスしている」
フロー状態
それは、極め・極め・
極めた結果
しかし
未だその状態は継続され
すなわち
「クオリア」なのだと。
投稿: 岡島妙英 | 2010年1月23日 (土) 09時42分
おはようございます 茂木サン 。
カメラの前の緊張 か 何百人の前での発表 どちらが 緊張する?
の問いに、私は 後者です。
茂木サンは、前者ですか? 更に、決まった言葉を話す事に緊張? もしかしたら 抵抗?があるのかもしれませんね。
今はサラサラ話されていますので、 慣れたということでしょうか。
(良かったです。)
投稿: サラリン | 2010年1月23日 (土) 10時10分