左側も右側も、20カットずつくらい
(2010年1月3日『クレイジーなプロフェッサーへの道』から続く)
以来、ずっと自分で髪の毛を切ってきた。ところが、AERAの表紙を撮影する少し前だけ、一度だけの例外があった。代官山にあるSUPERSTARSの佐藤民生さんに、髪の毛を切ってもらったのである。
ある日、佐藤さんからご連絡いただいた。その熱意あふれる内容に、心が動いた。「一度、髪の毛を切りにいらしてください」という。特別な体験が待っているらしい。私は、初めて制服をあつらえてもらう少年のように、清々しい気持ちで代官山の駅の改札を出た。
プロフェッショナルの放送が始まったのは、2006年1月のこと。佐藤さんのSUPERSTARSを訪れたのは、2005年の春だった。
SUPERSTARSは、音のインスタレーションなどを
施した最新の美容室。そのような流行の先端を行く美容室どころか、そもそも「床屋」に行くのが、10年ぶりである。緊張している私を、佐藤さんはにこやかに迎えてくださった。
その時、とてもきれいに切っていただいた髪型が、AERAの表紙の撮影の時にはまだ残っていた。それを、朝日新聞社内でヘアメイクさんがさらに念入りに整えてくださった。だから、AERAの表紙の私は、
ふだんの私からは考えられないほどきれいな髪型で映っている。
子どもの頃から、くせ毛がコンプレックスだった。小学校の頃、夜お風呂に入って髪の毛を洗う。当然ドライヤーなど使わないから、濡れたまま眠ってしまう。すると、翌朝になって、髪の毛のあちらこちらが春先のつくしのようにぴょんぴょんと立っている。
高学年になると、さすがにそれではまずいのではないかと思って、洗面所で水をつけて一生懸命直した。それが、うまくいかない。結局、あちらこちらからぴょんぴょん立ったまま、学校に行く。
休み時間に校庭でハンドベースボールなどをやっているうちに、次第に髪が「こなれてきて」直っていくが、とにかく恥ずかしかった。当時の同級生の女の子たちは、実は陰で笑っていたのではないかと思う。
大人になって、髪の毛は朝洗えばいいんだという智恵がついた。今でも、夜お風呂に入ったとしても髪の毛は絶対に洗わない。年に一回、親しい友人たちと「おじさん温泉」というものに行くが、その時も夜温泉に入る時は髪の毛は絶対に洗わない。「茂木さん髪の毛洗わないんですか」と聞かれても、「えへへ」と笑ってごまかしている。
夜は湯船につかるだけで、髪の毛は朝に入ってシャワーを浴びる時に洗うのである。その後は、タオルでふくだけ。ドライヤーなどは、やっぱり面倒くさいから使わない。あとは自然乾燥で放っておくと、今現在の普段の髪型ができる。
イギリス留学以来、他人に髪を切ってもらったのは後にも先にも代官山のSUPERSTARSの時だけで、あとはずっと自分で切っている。もちろん、プロのようにはうまく行かないが、いつでも切りたい時に切れるから、気楽である。
床屋に行っていた頃は、髪の毛が伸びてくると、「もうそろそろ行かなくては」と思いながら、面倒だからついつい先延ばしにしてしまって、結果として髪の毛がものすごく長くなってしまっていた。それで、床屋に行くと、「短くしてください」と言うので、長い時と短い時のギャップが凄まじい、という結果になった。
今では、「もうそろそろ長くなってきたな」と思うと、コンビニの袋とハサミを持ってお風呂場に行く。そうして、鏡に向ってバサバサと切ってしまう。まず右手で頭の左半分から切り始め、次にやはり右手で右半分をやる。後ろ側は直接見ることができないのだけれども、手で触って勘で切ってしまう。だいたい、左側も右側も、20カットずつくらい。所用時間は、5分もない。
それで、切った髪の毛はコンビニの袋に落として、しばって蓋をして、それはお風呂場の外のゴミ箱に入れる。それから、シャワーでさーっと髪の毛を洗って、一件落着。すっきりさっぱりである。
よく、取材の時に、「髪の毛は天然なのですか」と聞かれる。パーマをかけていると思っている人がいるらしい。「はい、天然です。そうして、自分で切っています」と言うと、一様に驚く。よほどの変人だと思うらしい。そんな時、グレッグの「クレイジーなプロフェッサーへの道を一歩踏み出したな!」という叫び声がよみがえる。(続く)
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コメント
取材のに来た人って、茂木先生のことご存じないのですね~
取材に来る前に、ちゃんと学んでください!って私ならいいます、茂木先生の人となりを、茂木先生がパーマネントをの為に美容院のイスに腰掛けているお姿、どうして想像がわきますかね~~~~^^
ところで、アエラを見たいです、絶対見たいので、
図書館、国会図書館・・ 絶対あるところって~~
考え中です
朝日カルチャーで、何とか見られないかしら・・
宜しく!^^
長女の主人はくるくる天パ、ゆえに、私の可愛い孫もくるくる天ぱ、^^
娘がよく天パって言葉を使うので、気楽な人って感じで受けていた言葉だったのが、パパになった旦那さんが頭を坊主にした時以来天パってん天然パーマの事だって判明、案名に坊主みたいなショートにしなければ、かっこいいのにと、遠目に内心、オバマさんそっくって、思って、ノーコメントで眺めています、
孫の航ちゃん、天パでとても可愛いのです^^
でも、学校で、男の子にはお前気もい、とかいわれ、
女の子には、あんた、ほんとのとこ誰が好きなのよってて女の子たちに取り囲まれるらしいです、
航ちゃんも、伸ばすと、先生にそっくり!
天パは子供のころから苦労しますね・・・^^
代官山の佐藤さんって方、優しいプロ意識のある方ですね・・ ご指名! すごいプロですよね~~
切りたい欲望が職業意識となった現れ、先生はお優しいですね、ちゃんといらしたんですから、
茂木先生のファン、新参者のファンですが、
私のお願い、聴いてよね~~
*グレックお好きなんですか・・
出演依頼がくるかもしれませんね、ふふふ
(続く)が楽しみです^^
reiko.
G
投稿: R.グランマ | 2010年1月 5日 (火) 11時34分
茂木サンの 今の髪型 似合っていますよ。
でも、小学生の時は コンプレックスだったのですね。
大人になり、ずば抜けた才能を発揮した方々の きっかけに コンプレックスや 欠点を 克服した場合がありますね。
何か 関係するところがあるのでしょうか。
時間が解決してくれたり、 気持ちを切り替えたりして 大人になっていくのですね。
投稿: サラリン | 2010年1月 6日 (水) 00時13分