打ち合わせの段階では、ナレーションというものは
『プロフェッショナル』の班の人たちとは、4年間一緒に番組をつくってきて、もうすっかり「家族」のような関係になっている。
有吉伸人さん、細田美和子さん、それに小池耕自さんが訪ねていらした時のことは昨日のことのように覚えている。
早稲田大学近くの、リーガロイヤルホテルでお目にかかった。一時間くらいお話していて、最後に、細田さんが突然「茂木さん、番組の司会とかには興味はありませんか?」とおっしゃった。
「はい、興味がないことはないですけれども」と言うと、「ああ、そうですか。それじゃあ、さようなら」とみんなで帰っていった。
ずっと、そのように記憶していたのだが、実際には、私が授業があるというので、「失礼します」と帰っていったのは私の方だったらしい。
いずれにせよ、あの午後が、私と『プロフェッショナル』の皆さんとの長いお付き合いの始まりであった。
それまで、私は、テレビというと、科学番組くらいしか出演したことがなく、『プロフェッショナル』のような一般的な番組がどのようなものなのか、何の知識もなかった。番組がどのように作られるのか、そこには制作者側のどんな思いが込められているのか、全く知ることなく現場に飛び込んでいくことになるのである。
今でも忘れられないことがある。一番最初の星野佳路さんがゲストの回の収録の準備を、NHKの中にある編集室でやった時のこと。VTRが流れる中、ナレーションがへんなところから聞こえてくる。どうも、背中の方から聞こえてくる。おかしいな、と思って振り返ると、当時ディレクターをされていた河瀬大作さんが、台本を見ながら読み上げている。
有吉伸人さんが、時々「キュー」などとつぶやいている。
収録前の、打ち合わせの段階では、ナレーションというものは担当のディレクターが読み上げるものである。そんな暗黙知を、私は知らなかった。だから、背中の方から声が聞こえてきて、びっくりした。
そのようにして、いろいろなことを徐々に学んでいくことになるのだった。
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コメント
二年前に 普段ほとんど TVを見ていない 私が、偶然(本当は、必然)に 拝見した番組。
プロフェッショナルな皆さんに 感動し、 茂木サン を知りました。
毎回、番組時間のいくつかの質問をする茂木サンに、
どんな方なのかな? と感じました。
そして、5月8日に 偶然(必然)に ブログを知る。
私の中で、意識や 世界観の広がり、
プロフェッショナルな方の仕事に対しての情熱や 行動力は
私を 引率して頂きました。
秋の 素敵な機会に 感謝しています。
茂木サン、プロフェッショナル制作班の皆様 ありがとうございます。
プロフェッショナルな制作班の皆様だから、 「プロフェッショナル 仕事の流儀」 ができ、拝見しているたくさんの方々に
元気と 勇気を与えています。
どうぞ、益々のご活躍が 出来ますように 祈っております。
投稿: サラリン | 2009年12月31日 (木) 11時07分
1990年代以来、TVを真剣に見ることがなくなっていた私。
自分の感性に鋭くヒットする、素晴らしいと思う番組があまり放映されなくなったのが、主な理由だった。
そんな私の心に、久々にヒットしたもののひとつが、この『プロフェッショナル 仕事の流儀』。
兼ねてから敬愛していた茂木先生がメインキャスターをされると聞いて、実を言うと初回から楽しみだった。
以来、先生の相手の懐に飛び込んで、核心に迫る聞き方に惹かれ、あるいは特殊メイク作家の江川さんの回のように、初めてのものに体当たりで挑戦する、といった姿勢が、時に面白く、時に感動的だった。
放映を毎週見るたびに、その道に真剣に生きるプロの姿勢に、生きるヒントのようなものと、世知辛い時代を清々しく生きる為の知恵のようなものを、多少なりともいただいていたような気がしている。
こんな良い番組は皆さんの真摯な努力以外に成し遂げられるものではないと思う。
番組も4年目に入りますが、これからも皆さんのますますのご精進をお祈り申し上げます。
投稿: 銀鏡反応 | 2010年1月 2日 (土) 17時54分