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2007年7月14日 (土)

仕事=遊び

福岡で「アイガモ農法」を実践する
古野隆男さんがゲスト。

スタジオに、生後3日〜一週間の
アイガモが来て、
ぴぃぴぃ ぴぃぴぃ
と鳴いた。

再現された水田にアイガモたちが
放たれると、
夢中になって水面を動き回り、
エサを探した。

そこがスタジオの中であり、
囲いがしてある所である
などということは
忘れて、
「今、ここ」に没入している。

「よく働きますねえ」
「いや、こいつらは働いているなんて
意識はないですよ。遊んでいるんですよ。」
「忙しく動き回っていますね」
「何しろ、楽しいわけですから、
放っておいても勝手にやります。」

有吉佐和子の『複合汚染』を
読んで衝撃を受け、
無農薬の有機農法を志した
古野さん。

しかし、10年間は刈っても刈っても生えて
くる雑草との闘いだった。

朝から晩までずっと刈り取っても、
またすぐに生えてくる。
米の収量は落ち、
一家の収入も激減した。

それでも古野さんがめげずに
続けられたのは、
「楽しむ」ということを基本において
きたからだという。

いろいろと試行錯誤してみることが
古野さんにとっての何よりの喜び。

そこには、「失敗力」とでも言うべき
試行錯誤を楽しむ精神がある。

「考えてみれば、日本人は、まだ
稲作を2000回くらいしか
していないのですよ。」
と古野さん。
「私も、あと何回できるか。せいぜい
5回か、10回か。その間に、いろいろな
ことを試したい」

古野さんのお話を聞いていて、
何もおそれずに歩いては
ぶつかったり、ころんだりする、
よちよち歩きの子どものことを
思い出した。

「これはできる」
「これはできない」
という知識にとらわれていると、
多くのことに
気付かずに通り過ぎてしまう。

壁や囲いのことなど忘れて、
「水田」という与えられた
文脈の中で動き回り、エサを
探すアイガモのように、
夢中になり、時間の経過を
忘れて動き回り、
試行を続ける。

そんな仕事=遊びの
人生を送れたら、どんなに
幸せなことだろうか。

住吉美紀さんはアイガモの
可愛さにきゃあきゃあと喜んで
いた。

アイガモがスタジオの水田の
中を泳ぎ回る光景は本当に
愛らしく、魅力的で、
何時まで見ていても飽きない。

「アイガモ農法を始めると、
田んぼについつい一日何回も
行ってしまうのです。
いつまでも田んぼから帰って
こないので、奥さんに怒られた
人もいます。」

古野隆男さんがゲストの
『プロフェッショナル 仕事の流儀』
の放送は、
2007年7月24日(火)の
予定。

http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/index.html 

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2007年7月 4日 (水)

サナギになる勇気

2007年7月3日の収録。

NHK内を散歩していたら、
宇川直宏さんに遭遇した。

あれれ!
と握手。

カメラを向けたら、宇川さんが
ポーズをした。

いつもより早い時間に着いたので、
技術陣が「カメラ割り」の打ち合わせを
していた。

違う時間に行くと、風景が違う。
早起き鳥は、何ものかをつかむ。

ゲストは、帝国ホテル総料理長の
田中健一郎さん。
担当ディレクターは荒川格さん。

カメラリハーサルでは、山口佐知子
さんがシェフ帽をかぶった。

田中さんは、「ムッシュ」と呼ばれ、
日本のフランス料理界の重鎮だった
村上信夫さんの後を受けて
明治23年に創業した日本屈指の
名門ホテルの料理の責任者となった。

あまりにも偉大な人の後を
受けて、田中さんは、一時期
何をしたら良いかわからず、
落ち込んだという。

人と会話を交わすことも
少なくなり、自分の中に
閉じこもってしまったという。

その苦境から抜け出すきっかけに
なったのが、田中さんの娘さんの
ひと言。

家族の言葉が、田中さんに
前に進む勇気を与えた。

娘さんは、自分がそのようなことを
言ったこと自体を忘れてしまっている
様子だということ。

本人は忘れてしまうような
何気ないひと言が
聞く者の心に残ることがある。

意図的に伝えようとする言葉にも
力があるが、
かえって、ふともらす無意識の
言葉の中に人を感化させる
力があるのだろう。

田中さんが村上さんの後継者となって
苦しんでいた時期は、
幼虫から蝶になる時に
「サナギ」になるようなものでは
ないかと思った。

サナギは周囲に対して一見無反応に
なり、何の動きもないように
思われるが、
中では、猛烈な勢いで「自分」
の作り替えが進んでいる。

鬱になったり、自信を失ったり、
周囲との活発なやりとりを
欠いてしまっているような
時期でも、
それが「蝶」になる前の
「サナギ」だと思えば
前向きになれるのではないか。

実際、田中さんはその暗がりを
抜けて立派な総料理長となった。

スタジオで、田中さんがつくって
下さった料理を試食した。

二つの異なるクオリアが
口の中で渾然一体となっていく
そのプロセスがドラマティックで
美味。

「今日のように、ワインもなしで
水だけで食べていただくのが、
一番緊張するのです」
と田中さん。

100ー1=0であるという、
田中さんの料理に対する
厳しい姿勢に、
官能と生きる道が混在となった人の
姿を見た。

ボクも、また、サナギになる
勇気をもらう。

放送は、2007年7月17日の予定。

http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/index.html 

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