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2007年4月20日 (金)

そのような「インテグリティ」があって

エルピーダの坂本幸雄さんがゲストで
いらっしゃる。

1980年代、日本は「半導体王国」
と言われ、高いシェアを誇ったが、
90年代になって韓国のサムスンなどに
シェアを奪われた。

そんな中、政府主導で設立されたのが
エルピーダ・メモリ。
しかし、赤字続きで、坂本さんが
「ピンチ・ヒッター」として招請された。
見事に経営を立て直し、
今再び世界一の座をねらおうとしている
坂本さんの経営哲学は、大変注目されている。

坂本さんは体育大学を出て、テキサス・
インストラメンツの倉庫係から出発
したという異色の経歴。

驚いたのは、ノートだった。
一目見て、大変密度の濃い思考の跡がそこに
あることがわかる。

固有名詞や数字が並んでいる。
「私にしかわからないでしょうね」
と坂本さん。

坂本さんの脳の中の思考運動が、
そのような記号列を吐き出す。
しかし、余人には何のことかわからない。
坂本さんのノートが、その高度な
集中思考の何よりの証言者になっている。

坂本さんの会社では、会議は週一回一時間
しか行わず、その時に重要な案件を次々と
決定していく。
なぜそのようなことができるかと言えば、
あらかじめ必要な情報を脳の中にインプット
しておくからである。

会議に出て、それからプレゼンを受けて
理解し、判断するのでは遅い。

出席するときは、いわば、必要な準備は
全て済んでいる状態なのであり、
その上で、自らの判断を皆の前で示す
のである。

坂本さんは、自分の会社や、半導体市況に
ついての細かい数値をことごとく把握
している。
いわば、脳の中で情報を濃密に凝縮して、
その上で必要な決定を下していく。

情報がネット上にあふれるようになった
現代社会における「罠」を逃れる秘訣が
ここにあるのではないか。
情報が散在しているだけでは、それが
濃縮して統合された時にだけ起こる
創発的プロセスが生まれない。

一度は、生身の自分の脳の中に、生きた
イマージュとしてそれをたたき込む必要があるの
である。

インターネットのような情報ネットワークは、
うまく使えば、脳の中に大変濃密な「情報の
ジュース」を沁み渡らせることができる
ポテンシャルを秘めている。

坂本さんは、自らが全てに
直接向き合う「ハンズ・オン」の
アプローチを通して、高度な集中的思考と
行動を実現している。

最後に、「ビジネスでお金を儲けるということと、
人間としての生き方はどのように関係すると
思いますか?」と伺うと、
「必要なのはインテグリティです」
と断言された。

不正なことはしない、ずるいこともしない、
社員や顧客の満足のために、身を粉にして
働く。
そのような「インテグリティ」があって、
初めて経済活動というものは価値を持つと
坂本さんは言われる。

坂本さんは、土光敏夫さんを思わせる
気骨のある経済人であった。

今週はスケジュールが詰まっており、
収録後、「仕事術スペシャル」の打ち合わせが
あった。

モニターからVTRが流れる中、
「体重100キロを切る!」
宣言をした須藤ユーリさんが、ナレーターの
代わりになってコメントを読み上げる。
となりで、河瀬大作デスクが、「須藤くん、そこ
はだね」などとツッコミを入れる。

住吉美紀さんが、ゲストの仕事の現場を訪れて
再取材したVTRは大変面白く、
ぐいぐい引き込まれる。

『仕事術スペシャル』は、住吉さんが
クリエーターとしての才能を発揮する
一つの作品なのである。


打ち合わせ風景。左から河瀬大作さん、
須藤ユーリさん。モニター内は秋山咲恵さん。

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2007年4月 6日 (金)

その逸脱が

人間の「やる気」というものは、
「何気ない姿勢」の中に現れるものである。

『プロフェッショナル 仕事の流儀』
や『クローズアップ現代』
などを作成している「社会情報番組部」
での一こま。

山本隆之さん(タカさん)がやる気を
出している。
机に向かって仕事をしている
(左から)赤上さん、荒川さん、須藤さん。
奥に見える有吉さんに囲まれて、
立ったまま何かを食べている。

タカさんの「前傾姿勢」に感じられる
「やる気」については、以前「クオリア日記」
でも論じたことがある。

http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2006/10/post_59e4.html 

ボクは、タカさんのこのような
「前傾姿勢」が好きである。
当編集部では、今後も、タカさんの
「前傾姿勢」を追い続けていきますゾ!

今週の収録のゲストは、盲導犬訓練士の
多和田悟さん。
もの言わぬ犬に、高度なテクニックを
教えるには、「犬語」を解する
必要があると多和田さん。

人間は、犬に向き合う時、ついつい
「がんばれ」とか「おとなしくしなさい」
といった「人間語」で理解し、働きかけ
ようとするけれども、
犬たちの固有の仕草、ふるまい、姿勢
を読み取れるようにならなければ、
心を通じ合うことも、立派な盲導犬を
育てることもできないと多和田さんは
考える。

多和田さんの犬の育成の基本姿勢は、
「ほめる」こと。
イギリスやオーストラリアでの経験が長い
多和田さんは、「グーッド!」
と声をかけながら、犬をほめる。

たとえ、してはいけないことを「ノー!」
と言って止める時にも、それは、必ず
最終的には「踏みとどまることができた」
をほめる「グーッド!」で終わらなければ
ならないと、多和田さんは言う。

最後に「グーッド!」と言って犬をほめる
ための段取りの一部として、「ノー!」
があるのが多和田流なのである。

「なぜ、そのような方法をとるのか?」
とお聞きすると、最終的には視覚障害の方の
quality of lifeのためであると多和田さんは
言う。

しかって命令に従わせていると、
しかる人の言うことしか聴かなくなる。

盲導犬は人生のパートナーである
はずなのに、言うことをきかせる
ためには始終しかっていなければならない
ことになって、
そのような精神状態が視覚障害者の方に
とっても良いはずがない。

人間にも通じる話であろう。

 盲導犬訓練士は、犬と向き合う以上に、
人間を知る職業。

 盲導犬訓練士の学校には、犬が
好きな人が来るが、
 彼ら、彼女らは、仕事の半分以上が、
目の不自由な方からは世界がどのように
感じられるか、そのことを想像すること
であるということを学んで行くのだと
いう。

 スタジオには盲導犬の「ナサ」君も
きた。

 ハーネスをつけていると、ナサ君は
「盲導犬」モードでいるが、
ハーネスなしでは、普通の犬に戻る。

多和田さんがハーネスを取ると、
ナサ君はうれしそうに
私や住吉美紀さんにじゃれついてきて、
なんだかほっとした。

 立派な盲導犬だって、生きものなんだから
逸脱する。
 その逸脱が、うるわしき人生のパートナー
へと昇華していく盲導犬(guide dog)という
文化は、素晴らしいものだと思う。

 犬は、仕事だと思っていない。人とゲームが
できるのだと喜々として街に出かけていくの
だと多和田さんは言うのである。

 われわれもそうありたいね。

 収録が終わり、多和田さんがスタジオから
出られたあと、
 私と住吉さんは有吉伸人さんと
向かい合って「居残り」の質問を収録する。

 編集で使うために、私や住吉さんが質問
している場面だけを収録するのである。

 昨日の「居残り」には仕掛けがあった。
 最後に、
有吉さんが目配せして「茂木さん、例の質問を」
というので、
 私は住吉さんの方を向いて
 「住吉美紀さんにおうかがいします。誕生日を
迎えられたお気持ちはいかがですか?」
と尋ねた。

 それと同時に、スタジオの入り口から
ろうそくを灯したケーキが運ばれてきた。

 すみきちのバースデーだったのである。

 一気に吹き消した。チョコレートケーキ。

 住吉さん、おめでとう。
 今後もよろしくお願いいたします。

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