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2007年3月 9日 (金)

子どもであることの価値

NHKで待ち合わせて、
住吉美紀さん、有吉伸人さんと
車に乗った。

 陽光がほんとうにさわやかで、
車窓からの景色が心地よい。

 私は急いで終わらせなければ
ならない仕事があったので、
前部座席に乗り、時々後ろの二人と
言葉を交わしながら仕事を進めていた。

 「直近は、メールを読んで返事する
こともできないような状態なんですよ」
 「ぼくもそうです」
 「メールが読めなくなってしまっては、
いよいよ忙しさの末期症状ですねえ」

 有吉さんと同病相哀れむような会話。

 書き終えて、メールを送信した瞬間、
本当にウソのような話だが、
 ちょうど車が目的地に着いて、
さっとモードが変わって
すっと背中が伸びるような緊張感が走った。

 スタジオ・ジブリ。初めて
目にするアニメーションの聖地は
とても気持のよい空気に包まれていた。

 まだ撮影開始まで時間があったので、
付近を散歩していると、有吉さんと
荒川ディレクターが慌てたように
「茂木さ〜ん」と叫びながら追いかけてきた。

 「まだそちらには行かないでください!」

 どうやら、私はアトリエの方に向かって歩いて
いたらしい。

 スタジオ・ジブリの方に戻り、
 鈴木敏夫さんと、コーヒーを飲みながら
お話する。

 階段に、Pixerのメンバーから宮崎駿
さんに宛てた寄せ書きがあった。
 
 You are THE inspiration.

などとリスペクトを表す言葉が綴られている。

 猫が一匹、階段を上っていった。
 
 「あの猫はね、三階にお気に入りの女の子が
いるんですよ」

と鈴木さん。

 時間となって、住吉美紀さんと一緒に
アトリエの方に歩いていった。

 大きな木に囲まれた素敵な家が現れ、
その前にシトロエンが停まっているのが
目に入ってきた。

 ドアを開けたらそこにいらっしゃる
と伺っていたのだが、
 宮崎駿さんが、玄関前に立っていらした。

 「宮崎さ〜ん!」と手を振ると、
にこにこ笑いながら手を振りかえして
くださった。

 アトリエの吹き抜けの間に座る。
 窓から巨木が見え、頭上には橋の
アーチがかかり、
 グランドピアノがなにかが起こる
楽しげな予感をかき立てる。

 一時間くらいのインタビューの
予定だったが、時間を大幅に超過して
三時間近くになった。

 二階の仕事部屋を案内してくださった。
 
 「この家が建った時、子どもたちが
あのアーチを渡ってはしゃいで笑いましてね」
と宮崎さん。

 「あの笑い声が、この家の完成を
祝福してくれたようだったなあ。」

 ボクは、宮崎さんとお話して、とても
大切なインスピレーションを受け止めた
気がする。

 それは、「子どもであることの価値」。

 ちょっと変わっていて、偏屈で、
でも瞬間のキラキラに満ちていて、
 とてもすごいスピードで変わり続けて
いて、
 大人たちや社会の思惑などには
簡単には従わない。
 だけど、春になって芽を出す草のような
内なるバネの力がある。

 来る前よりも、自分の中の「子ども」
の勢いが増したうれしい状態で、
アトリエを後にした。

 住吉さんや、有吉さん、それに
みんなとロイヤルホストに入り、
 「いやあ、良かったですね」と振り返った。

 当日の模様は、2007年3月27日
放送の『プロフェッショナル 仕事の流儀』で。

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コメント

3月27日の放送を今から楽しみにしております。毎回、出演者の方の仕事の流儀をリスペクトしております。今後もよろしくお願い致します。

投稿: パレア小林 | 2007年3月 9日 (金) 20時13分

「男の成熟。それは、子供の頃遊ぶときに持っていた真剣さを再び見いだしたという意味である。」(ニーチェ『善悪の彼岸』より。)この部分はまさに、茂木さんのことですね。実は宮崎アニメは一度も観たことの無い私ですが、プロフェッショナルの視点で拝見できることを、楽しみにしています。

投稿: 菫 | 2007年3月 9日 (金) 23時06分

いつも楽しくブログ拝見しています。
サイトのお二人のコメントもGoodです!!

「子どもであることの価値」同感です。
私も小学校教員という仕事柄,そのことを大切にして,自分が子どもだったころの「輝いていてシンプルで柔らかな気持ち」を慈しみがら,子ども達の未来のお手伝いをしていきます。

投稿: nagobear | 2007年3月11日 (日) 09時53分

「プロフェッショナル」から見た、宮崎駿さんを拝見するのをとても楽しみにしています!

 英語の映画の掲示板の感想とか見ていると、とても日本的に思われる設定の作品であっても、アメリカからアフリカ、シンガポール、アイスランドまで、映画がごく自然体で受け止められて、皆が何か人間として普遍的な感情を書き綴っているのにはちょっと不思議だな、という気持ちと共にすごいな、という気持ちが強く沸きます!!

投稿: 朝 | 2007年3月11日 (日) 13時44分

「子どもであることの価値」に気づくのは大人だけ。そして、大人になったら気づく人にしか慈しめないものなんだと思いました。
その価値を無自覚に踏みつけにしているのもまた大人たちだから・・・。

自分の内にある子どもを大切にしている人は素敵だなあと思います。茂木さんの魅力は、それに自覚的であることなんですね、きっと。

投稿: こなつ | 2007年3月12日 (月) 06時03分

『プロフェッショナル』にあの宮崎駿さんが出る、というだけで、こりゃあ、凄いことになってきたなぁ、という思いしきりです。

子供である事の価値に気付くか、気付かないかは、大人になった時、心の奥底に純粋なものを残しているか否かにかかっているような気がする。

いまの政治家は、子供である事の価値に気付いているだろうか。少なくとも茂木さん以外のTVに出ている知識人は如何なのだろう…。

宮崎さんは、ずっと子供のころの感覚を忘れないでいる人だから、子供としての価値が何なのか分かるのに違いない。

投稿: 銀鏡反応 | 2007年3月13日 (火) 18時18分

なんだか、涙が出てきましたw

投稿: たけちん | 2007年3月15日 (木) 14時40分

この前の宮崎駿さんの放送みましたよ。アトリエのおうちもクルマもすっごく私好みで、そこに住むことを考えただけで、ジブリ映画の中に入っちゃえる様な、わくわくする気分になってしまいました!宮崎さんをとりまく日常がなにもかも素敵にみえました。
でも、そのなかに・・・宮崎さんの孤独も少しみた気がしました。才能があり、誰もが敬愛の念を抱く宮崎さん。私もジブリアニメは大好きです。けれども、そこには新しいものを作り続けていく人にしかわからない苦悩が、たくさんあるんだろうなって、なんにもわからない小娘は思うのでした。どんなにすばらしいといわれる人も、「人」
だから私と同じように悩んだり苦しんだりつらいこともあるのだと。そして、そんな弱さもカメラのまえにカッコつけず、赤裸々にみせる宮崎さんはやっぱり偉大だと改めて感じたのでした。

投稿: まるめろ | 2007年3月31日 (土) 01時47分

「ハウル作ってくれて、ありがとう。」
「どういたしまして。」

あの少女と宮崎さんの何気ないシーンに、スタジオジブリの全てを感じるように思います。

ポニョ、楽しみだな☆

投稿: ニンゲン | 2007年5月20日 (日) 05時28分

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